3月18日午前5時8分,相模鉄道東急電鉄の新横浜駅4番線から,一番列車が発車した.
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初列車は新横浜駅発浦和美園駅行きで,充当されたのは飾りつけを施した相鉄21000系の第2編成.“40K”という運行番号が示す通り,本来は東急電鉄の編成が充当されるところ,相模鉄道に敬意を表して(?)の登板となった.3番線で待機するのは東京都交通局6300系6326編成の西高島平行き一番列車.

この21102編成には,両先頭車に相鉄のマスコット“そうにゃん”と東急のマスコット“のるるん”が貼られ,その間には“祝開業 相鉄・東急新横浜線”の文字が貼られている.また側面にも楕円形のステッカーがあって,開業を華やかに彩っている.ちなみに20000系第1編成にも同じ装飾が施されているという.

開業式典は,僕たちがいたホーム先端ではなく中央部で執り行われた.こちらの模様は東急電鉄と相模鉄道から提供していただいたので,その中から1枚をお目に掛けよう.
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テープカット.左は相模鉄道の千原広司社長,中央が鉄道建設・運輸施設整備支援機構の河内 隆理事長,右が東急電鉄の福田誠一社長.写真:相模鉄道・東急電鉄

式典時には,相鉄のブランディングプロジェクトに,スタート初期から携わってきたというスタッフが感涙にむせぶ一幕もあり,とても感動的なひと時だった.
 式典の終了後,別室で新線の開業に至る経緯や今後の展望などについてのの質疑応答があって,6時半,取材は終了した.

終了はしたけれど,世の中の一日は,これから始まる.僕もそのまま帰宅するには忍びない.

昨年来,数次にわたって試運転列車を追いかけてきたが,それももうおしまい.今日からは営業列車を記録せねば.ということで,相鉄沿線の初日の様子を観察することにした.

どこで……と,ずいぶん悩んだのだが,地元の方のアドバイスもあり,相鉄の横浜からの列車と新線からの列車が合流する西谷より西,なおかつ,本線といずみ野線が分岐する二俣川より東…となれば鶴ヶ峰しかない.
 幸いにして(?),今日は太陽の向きを全く気にする必要がない.そこで,駅から線路沿いに少し西谷方へ戻った坂道のほぼ頂上で両方向からの列車を待ち受けることにした.
 いつどこから,どの鉄道の車輛がやってくるのか,手掛かりはただひとつ,相模鉄道のウェブサイトからダウンロードできる全線時刻表.
 この時刻表なら,新横浜線直通列車の運行番号末尾に“G”と“K”が記されているので,前者は相鉄,後者は東急と知ることができる.全貌を解明している暇はないので,差し当たって“次に来るのはどれ”と読み取るだけだが,それだけでも,心構えが大いに違ってくる.
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最初に姿を見せたのが川越行きのJR東日本E233系.関係ないじゃないかというなかれ.列車種別が,これまでの緑地に白文字の“各駅停車”から,黒地に緑文字の“各停”になっている.件の時刻表でも背景を緑にすることで対応している.さらには駅での表示も同じ色分けとしている.

なにしろ,同じ“渋谷”でも,東横線と埼京線とではまったく違う駅に到着するばかりでなく,運賃だって異なっているのだから.一文字違いながら“川越市”行きも存在するし.
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続いては東急3000系の海老名行き.はた目にはどうなることかと思った8連化も,急速に進行して,保安装置の追加も含めて,全編成が開業までに対応済みとなった.
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東急5050系4000番代トップナンバーの“川越市”行き.こちらは列車種別が黒地に紫…ピンク?文字.時刻表では地にベージュが敷かれている.海老名方面行列車も東急の3000系.早くも“ここはどこ?”状態となった.
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西高島平行き21000系第6編成.“東急目黒線直通”を表示中.列車種別は青…水色地に白文字.
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快速“横浜”行き.電車は東急3000系だが,この横浜は相鉄の横浜駅である.列車種別は紫地に白文字.

こんな運用もあるんだ,運がいいなぁ,と思ったのは午前8時過ぎごろ.完全な勘違いということを思い知らされることになるのは,数時間後のことである.

このころから,列車が時刻表通りに姿を見せなくなった.開業景気で混雑しているのだろう……東横線では一部列車でワンマン運転も始まったし…….と思っていたら
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各停大和行き……こんな列車,設定あったっけ?運行番号末尾はKだから,東急の車輛による運用であることに間違いはないけれど.あとで調べてみたら,どうやら海老名行きのはずが,なんらかの理由で大和止めとなったらしい.
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なんと,5050系4000番代の第12編成……Qシート組み込み編成まで現われた.それも“横浜”行きで.

これは!というわけで,星川へ移動することにした.折り返しを捉えようというわけである.
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残念ながら戻りは星川まで回送,その後は留置という運用だった.それにしても左側の2本の留置線も東急の車輛である…….向かってくる列車こそ相鉄12000系だけれども…….

ここはどこ?私は誰? 再び……

今回の新線開業から,横浜と西谷の間のシャトル列車が新設されたのだが,どうやらその列車にも東急の編成がたくさん使われているようなのだ.それゆえに,星川での3000系留置ということになるらしい.

さて,夜中からの活動が祟って,お昼過ぎにはちょっと疲れてしまった.装飾編成は,相鉄のもう1本も,東急の5080系も,僕の前には姿を見せてくれなかった.けれど,5月中ぐらいまではそのままで走っているようだから,またの出会いを期待することとした.

ちなみに,東急電鉄の時刻表なども併せて研究した結果,東急新横浜線に乗り入れる車輛は,相模鉄道のほか,東京地下鉄埼玉高速鉄道東京都交通局
 相模鉄道線内へは東急の電車のみが乗り入れる.
 既に発表されていた西武鉄道だけではなく,試運転を実施していた東武鉄道の車輛も,新横浜線には乗り入れない.ただし非常時には,この2社の車輛も,新横浜駅までは乗り入れることができるよう,準備されている,ということが判明している.横浜高速鉄道のY500系と東急5050系のうち8輛編成も入ってこない.

星川駅ホームでの関係路線図をお目に掛けて,今回の締めくくりとしよう.
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撮影する向きを間違えて,地図とは東西南北が逆になってしまったが,複雑,怪奇といっては失礼だが…….気がつくのは直通先だけではない.“通勤急行”を除いて,“急行”という種別が消滅している.