721系に始まって731,733,735系と発展形が開発されてきたJR北海道の通勤(一般形)電車.さらに進んで737系が報道公開された.

歴代の電車と大きく異なるのは,ワンマン運転仕様であること,2扉であること,アルミ合金製であること,そして2輛ユニットであること.
 2扉であるのは,ワンマン運転に対応するには3扉では不都合が多いから.アルミ合金製であるのは,ワンマン運転のための装備品によって重量が嵩むため,車体のさらなる軽量化を推進して総重量を抑える必要があるからである.そして2輛ユニットとされたのは,運転線区の輸送需要を勘案しての最適解が2輛ということ.
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報道公開が行なわれた札幌運転所最寄り駅の稲穂駅に到着する721系電車.1988年から数次にわたって増備された,ヒット作(?).しかし今ではJR北海道の一般形電車としては最古参となった.写真は1992年から製造された6輛固定編成バージョン.
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そしてこちらが今日の主役である737系電車.側窓の幅が特異.2mに及ぶだろうか.2扉なので731系や733系よりも際立っている.車体は無塗装ではない.
カラーリングのコンセプトは,優しさが感じられ,親しみやすく明るく若々しいイメージとしての“さくらいろ”.具体的には淡いピンクで装われている.
 正面はブラックアウトされているが,腰板にJR北海道のコーポレートカラーであるライトグリーンと,警戒色としてイエローを配してアクセントとしている.
 なお,アルミ合金製の電車は,JR北海道でも735系が存在する.しかし2編成のみの製造にとどまったので,量産されるのは初ということになる.

編成は室蘭・旭川方が制御電動車でクモハ737.小樽方が制御車でクハ737.
 パンタグラフはシングルアームタイプをクモハ737に1基搭載.空調装置は集中式を各車1基ずつ搭載している.
 床下機器は雪が付着しにくいよう,基本的にカバーに覆われていている.例外は主変換裝置や主変圧器の素子放熱部分.とりわけ主変圧器の放熱部には,733系の主変圧器と同じように,たくさんのフィンが取り付けられていて目を惹く.
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ライトケースには大粒のLEDを4粒ずつ並べたセットを2組ずつ収納.前照燈は腰板の2セットと上部ケースの内側1組.尾燈は上部ケース内の外側1組.なお前頭部は普通鋼製である.

さて室内.外観からはゆったりしたクロスシートが配置されているかに思えるが,実際にはオールロングシートである.
 側窓は各車片側3枚ずつが換気用として上部が内側に倒れ込む方式で開閉可能となっている.日除けカーテンは設けられていない.
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長い長いロングシート.画面右側で途切れているのはフリースペースで,ここがアクセントとなっている.表地がオレンジの部分は優先席.

大形車椅子対応のトイレはクハ737に設けられている.その部分に側窓はないが,そのほかにも各連結面寄りとクハ737の小樽に向かって右側は側窓が1枚少ない.これらの部分の室内側は機器室である.
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大形車椅子対応トイレと,その対面に設けられた車椅子スペース.画面右手は側扉で,内張は車体外部と共通したイメージの淡いピンクに装われている.

運転室は,貫通タイプ先頭車としては標準的な寸法と機器配置.マスコン・ブレーキは左手操作のワンハンドル.
 乗客の目に触れるワンマン運転設備としては,乗務員室と客室との仕切りの櫛桁部に設けられた運賃表と,その下に置かれた運賃箱,整理券発行機がある.なおJR北海道ではワンマン列車の場合前乗り前降りなので,整理券発行機は連結面寄り側扉脇には設置されていない.
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同じ左手操作のワンハンドルながら,メーターや機器類の配置はこれまでの電車と各部で異なっている.

さてこの737系電車.既に日立製作所から7編成が納入され,盛んに試運転を行なっている.そして5月20日から室蘭本線の苫小牧と室蘭の間で営業運転を開始する.
 置き替えられるのは51系客車改造のキハ143形.
 置き替えに際しては,単純に車輛を変更するのではなく,時刻や始発,行き先の変化を伴っているので,実質的にはダイヤ改正といえるだろう.
 なお,早朝と夜間には札幌発着の列車にも充当される.これは,配置区である札幌運転所からの送り込みを兼ねた設定である.
 そしてさらに,今年度中には6編成が追加されることになっている.そしてこれらは,函館本線への投入を含んだものであること,間違いない.函館本線のどの区間に投入されるのかは,まだ発表されていない.けれども,恐らくは岩見沢と旭川の間であろうと,充分に予想できることである

ということで,久し振り……733系から約10年振りの新形式通勤形電車である.営業運転開始を,大いなる興味を持って待ちたいと思う.