東京に住むようになって以来このかた,京浜東北線や東海道本線の電車に乗るたびに気になっている建物があった.それは大井町駅から品川に向けて左手の煉瓦の建物.
 明らかにJR東日本の品川電車区…山手電車区…いやいや,東京総合車両センターの敷地内にあって,現役として使われている建物であり,同地を訪れるたびに“観察を…”と思いつつ,本来の目的である取材に追われて撮影どころか,近づいて観察することすらままならないうちに40数年が経過した.
 ならば敷地外から観察すればよいのに…と問われれば“ぎゃふん”というしかないのだけれど,つい先日,ようやく近寄ることができた.
 とはいえ,あくまでも敷地外,それも東海道本線や京浜東北線の線路を挟んで反対側の道路から垣間見たに過ぎないわけではあるが.
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壁面の多くが蔦で覆われた煉瓦造りの建物.窓枠はアルミサッシに取り替えられているが,これこそ,現役の証し.撮影場所は品川区南品川六丁目.浅間台小学校の辺り.建物の奥にみえるのは東京総合車両センター東エリア…元の品川電車区,いや山手電車区の構内本部庁舎.

長さ40メートル以上,幅は15メートル程度だろうか.綺麗なイギリス積み…厳密にはオランダ積み?…が印象的で,妻の頂部にはなにやらデザインされた装飾石が見える.
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妻の上部を望遠レンズで拡大.石かコンクリートか,刻まれた模様はなにを意味するのか.

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建物の南面.完全に蔦に覆われて,ディテールはまったく判別不能.1階の入口には木製の札が掲げてあり,“JR東日本運輸サービス 山手事業所”という文字が読み取れる.

JR東日本運輸サービスという会社,元は関東車輌整備という名前で,車輛の清掃,整備,メンテナンスなどを請け負っている会社.東京圏の車両基地に事業所を持っている.

建物の現況はなんとなく解った.では,その前身は?
 “品川区 煉瓦”などをキーワードとしてインターネットで検索してみた結果,判明したのは,元来は大正3/1914年の京浜間電化に際して設置された,変電所の建屋であったらしいということ.そういえば,この建物の北側には現在もJR東日本の大井町変電所が存在する.となれば,さきほどの妻上部の装飾石に刻まれているのは,帝国鉄道=鉄道省=Imperial Government Railways=IGRを組み合わせたロゴというかマークかもしれない.でも,他では見たことないけれど.

と,いうことで,次の品川電車区…東京総合車両センター訪問のチャンスには,せめてもう少し近づいて,この建物を観察してみたいと思っているのだが,さて,それはいつ,実現するだろうか.