総合車両製作所の横浜事業所といえば,元の東急車輛製造横浜製作所である……というようなことは,ここの読者ならば,先刻ご承知かもしれない.
 ならば,工場の正門から神武寺駅までは,国鉄…JR東日本横須賀線での甲種輸送や試運転に備えて,京急の2本のレールのほかにもう1本のレールを敷いた,3線区間となっている……ということも,きっとご存じであるに違いない.そしてこの区間では,さまざまな牽引車が活躍してきたことも…….
 僕が知っている範囲では,東急電鉄7200系のような電車…コルゲートがあるからステンレス鋼製かと思ったら鋼製車……,東急電鉄の3000系,国鉄DD11,小田急1300形,上田交通から里帰りした東急7200系,神奈川臨海鉄道DD55,そして日本車輌製のD-502…….

そんな歴代牽引車の歴史に,新しい1頁が開かれようとしている.それが,今日! 6月1日に公開されたECOMO-01とECOMO-02である.
 近いうちに使用開始になりますとのお知らせをいただいて,久し振り(でもないか)に京急電鉄の快特に揺られてきた.
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投入されたのは2輛.手前が青塗りのECOMO-01,黄色がECOMO-02.2軸ボギー台車を2組備えたディーゼル機関車に見えるが…….最新のリチウムイオンバッテリー車である.デッキに設備されたホイストによって,いかにも事業用らしい雰囲気が演出されている.

製造所は北陸重機工業.キャブ裾の台枠に取り付けられた銘板によれば,“リチウムイオン電池搭載牽引車”だそうである.メーカー型式はHEZF-55LPC.
ハイブリッドかと思ったら,そうでもなくて,純然たる“蓄電池車”だった.
 形式のECOMOとは,Ecological-Mobilityの文字列から抽出した略称とのこと.JR東日本が掲げる“ゼロカーボン・チャレンジ2050”の一環としても位置付けられている.

車体全体の形は,北陸重機の標準設計が採り入れられているが,塗装などのデザインは同社オリジナル.ボンネット上面にも“ECOMO”のレタリングをいれるなど,ちょっと遊び心も.
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出場門の踏切に差し掛かるECOMO 02.ボンネット上面のレタリングが解るだろうか.天地逆だが.
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主電動機.台車装架ではなく,車体側に取り付けられている.
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減速機を介してプロペラシャフトで動輪に伝動する.台車内にはもう1本のプロペラシャフトがあって2軸駆動となっている.

日本の電動車輛としては珍しい動力伝達方式といえるが,製造所が北陸重機ということで,同社の主力製品である内燃式機関車で一般的な,ボンネット内にエンジンを搭載して減速機経由でプロペラシャフトにより動輪を駆動する方式が採用された,ということである.

主電動機は安川電機製の永久磁石式三相同期(PMSM)電動機.1基当たりの定格出力は350355kW.主制御装置はVVVFインバータ制御方式で,これも安川電機製でボンネット内に搭載している.外箱にはA1000とCIMR-AA4A0930AAAという型式名が記されていた.これは同社の高性能ベクトル制御インバータ装置製品群のひとつである.

電動空気圧縮機はナブテスコのC1200.
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ボンネットを開いたところ.右が電動空気圧縮機,左が主制御装置.反対側のボンネットにも同じ機器が搭載されている.
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2エンド側から見たECOMO-01.ただし台枠側面には丸の中に4の数字が.ということは,この車輛は機関車ではなく電車扱いということか.後方に並べられているのは神奈川臨海鉄道から譲り受けたDD55 15.昭和52/1977年の富士重工製である.

このECOMO.いずれにしても鉄道事業法による車輛ではなく,単なる“機械”なのだということはいうまでもない.
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構内移動中の運転室.入換などの作業用だしく,DE10などと同じ横向きである.操作は左手のワンハンドル.機関車に必須の“単弁”は見当たらない.手前に見えるレバーは,輸送する車輛のブレーキを制御する,自動空気のハンドル(編成ブレーキ).

さてこの牽引車……趣味的には機関車以外のなにものでもないが…….連結面間の全長は16,900mm.DE10より長く,DD51よりは少し短い.ボンネット内におさめられた機器類を見れば,もっと短くできそうに思うのだが,聞けば,使用される範囲の線路設備上の制約を勘案してのこの長さだ,とのことだった.
 充電は,例えば深夜の仕業を終えて構内に新設のステーションでスタートし,朝の始業前には満充電完了,だそうである.

それにしても,曇りから雨模様に推移するはずだった今日の横浜市金沢区.予定された時刻を大幅に延長していただいて,取材陣一同,心地よい疲れと大満足の午後となった.
 最後に,同社が運営する“総合車両製作所 電車市場”のご担当から“いま話題のこの製品も,ぜひ紹介してください”とPRが.
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115系電車の側面方向幕である.吉田経由村上行き.現在の新潟色と初代新潟色の2種類.

“今,ちょっと話題なんです”と.
 先ごろ日本中を沸かせた野球を意識して……とのこと.そういえば!
 それぞれ税込みで1,650円.現在の新潟色は在庫僅かだそうである.ご注文はお早めに!

来月号誌面では形式図など掲載の予定.乞うご期待!

※2023.06.02:一部語句,記述及び数値修正