7月24日,JR東日本の横浜支社から“鶴見線への新型車両投入について”と題する報道資料が発表された.
 鶴見線の103系が,現在の205系に置き替えられてどのぐらいになるだろう……記憶と記録をたどってみれば,約20年前の平成16/2004年のことだった.その前,101系が103系になったのは平成4/1992年.こうやって振り返ってみれば,103系の時代というのは,存外短かったことになる.
 一方で205系は投入から20年,新造からは30年以上を経過していることになる.そろそろ代替わりしてもおかしくない時間の経過である.
 今回の交代劇で目新しいのは“新造車の投入”ということ,205系が鶴見線に配置された時には,既に“ステンレス鋼製車の先頭車改造はいろいろな意味で割に合わない”という傾向だったから,充分に予想されたこと.さらに令和2/2020年には小単位での運転に特化したE131系が開発され,翌年から房総日光・宇都宮地区相模線への投入が続いたから,鶴見線へも……と予想していた向きも多いのではないだろうか.
 報道資料には,3輛編成を8本,合計24輛を投入するとある.現在の3輛編成9本より1本少ない.これは他線区への新車投入にも見られる傾向で,検査体制やダイヤ構成の見直しによる予備車削減,ということだろう.
 資料には触れられていないが,JR東日本への追加取材により,番号区分は1000番代ということが判明している.
E131系
完成予想イメージ図.一目でこれまでのE131系との差異が判るだろう.それは車体幅.正面の周囲は海をイメージしたブルー.正面窓下のドットは歴代鶴見線用電車の色,すなわち茶と黄色.車体帯は青と黄色である.写真:JR東日本

裾絞りのない狭幅車の導入理由についても,資料には記されていないが,“使用線区内に車体幅に制限のある箇所が存在するため”とされている.具体的にはこれまでのE131系が2,950mmであるのに対して,2,778mmと発表されている.205系の2,800mmよりもさらに22mmも狭いのは,鶴見線の問題ではなく,製造側の都合によるものに違いない.さらにいえば,鶴見線には車体幅2,900mmのE491系“East i-E”は入線している.だから,本当にわずかな“惜しい”ところなのだろう.かつて,大川支線は武蔵白石駅のカーブがきつくて17m車のクモハ12が長らく残されていたが,その解消のために,分岐駅である武蔵白石駅のホームを撤去するという大胆な施策によって20m車を投入したという経緯がある.今回はそこまで思い切ることはしなかったわけである.
 窓配置はこれまでのE131と同じだが,車端部吹き寄せ部の寸法は違っているように見える.地下鉄乗入れ用狭幅車E231系800番代と似ているような気がするが,これは形式図を見なければちゃんとしたところは,判らない.
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最初に投入された房総地区用のE131系.2輛編成である.車内はセミクロスシート.トイレ付.写真はモニタリング装置取り付け準備編成.千倉 2021-4-11

次は宇都宮・日光地区用の600番代で3輛編成ロングシートでトイレ付き.
 翌年初めには相模線用として4輛編成ロングシート,トイレなしという仕様の500番代がお目見えした.
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日光・宇都宮地区用の600番代は3輛編成となり,ロングシートとなった.トイレは設置されている.営業運転が始まってからは宇都宮駅で眺めただけだから,乗りに行かなくちゃ.宇都宮運転所 2021-8-19
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相模線用500番代は4輛編成でロングシート,トイレなし.こちらはワンマン運転が始まってからはまだ行くことができていない.入谷-相武台下 2022-2-22

さて今回の室内.基本的にはこれまでのE131系と同じに見える.しかし,目ざとい方なら側扉の内張がステンレス鋼無塗装仕上げになっていることに気づくだろう.
客室内
客室内イメージ.腰掛表地は“海沿いを走る”をイメージとした青と明るい茶の組み合わせ.側扉や貫通扉の内張りがステンレス鋼の無塗装仕上げであることに注目.半自動スイッチは柱から出っ張ったタイプ.写真:JR東日本

この側扉内張りの金属地肌化は,E235系1000番代では既に昨年4月に落成した第14編成と附属J14編成から実施されている.さらに荷物棚も単純なパイプ製に変更されている.E131系の客室内イメージ図でも同じような描写であることが判るだろう.
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600番代の内装.側扉や貫通扉の内張り,荷物棚の構造が今回の1000番代とは違っていることに気づく.宇都宮運転所 2021-8-19


報道資料には,この1000番代にも線路設備モニタリング装置が取り付けられると記されている.前例に倣うならば,最終の2編成が1081,1082という車号になるのだろうか.
 そして車内には機器箱が設置されるのだろう.
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相模線用E131系のモニタリング装置.クハE130に取り付け.そういえば205系では扇町方がクハ205だが,E131系はどうなるのだろう.

営業運転開始は“今冬から”とされている.早ければ2023年12月ということになる.だとすれば,秋頃には現車が落成する,というスケジュールだろうか.

同じ日,新潟から“都上り”してきたE127系の南武支線での営業運転開始日が9月13日であることも発表された.既に1編成は武蔵中原に到着していることは,本誌の“いちぶんのいち情報室”でお伝えしている.

このE127系,帯色は変更されるが,半自動スイッチは存置される.そのほか,防犯カメラやLEDによる室内照明を採用すると発表されている.

なんだか,鶴見界隈が一気に様変わりしそう,いや,する.新しいもの見たさの僕は,久し振りに鶴見通いが続くのだろうか.
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最後にお目にかけるのは,E127系が新潟地区で活躍していた姿.朝の混雑時には6連も組んでいた.早通-新崎 2012-6-25

※2023.07.28:本文一部欠落修正