10月6日,阪急電鉄からリリース発表があった.題して“新型車両2300系・2000系を2024年夏より導入します”.
少しでも阪急電車に関心のある方ならば,2300系が京都線,2000系が神戸線,宝塚線用であることだろうという想像がついたことだろう.
それにしても2300系と2000系だなんて,時計の針が60年分以上も逆回転したような…と思った方も少なくないだろう.僕もそのひとりである.
もちろん冷静な頭では,10年前には1000系と1300系がデビューしているのだから,今回も“二代目”である,と,理解はしている.してはいるけれども,でもある.
外観.現代の1000・1300系の流れは汲むものの,正面窓下辺の曲線が目新しい.これによって“疾走感”を醸し出す効果を狙っているという.写真:阪急電鉄
ちょうど10年前,西宮北口の車庫でお披露目された時の1000系.1/500秒ではLED表示の文字が少し欠けてしまった.MODELERS FILEでの詳報は2015年1月号.2013-11-22
こうっやって見比べてみると,下辺だけではなく車体外側が下に向けてすぼまっていること,前照燈の位置が下がっていること,それに伴って屋根と車体との間の塗り分け線が変更されていることなど,いろいろ気がつくことが多い.
そういえば貫通扉の開く方向が変っているようで,ノブの位置が動いている.
続いて室内はといえば
中間に仕切を入れた腰掛は,内壁などの色遣いを含めて1000・1300系と同様にみえるが,半透明の素材を使った袖仕切りが新しい.写真:阪急電鉄
先頭車輛の車椅子スペースが拡大されている.手摺が2段になり,車椅子固定具を新設し,吊り手の色を変更するとともに取り付け高さを低くしている.写真:阪急電鉄
そしてクロスシートのイメージ図も添えられた.これは“京都線の新型特急車両として2300系”ということである.最初は見出しの“京都線では大阪方から4両目に当社初となる座席指定サービスを導入”に惑わされて4号車だけのことかと思ったのだけれど,どうやら8輛全部がクロスシート(転換式セミクロス)となるようだ.
1本脚が特徴の腰掛は9300系のイメージ.背摺上部の枕部分にも共通性が感じられる.側扉脇のヒップレストは面積が広くなった.写真:阪急電鉄
さてこれで気になるのが,9300系との関係.今回の発表では“いつまでに何編成”という長期計画は示されていない.けれど,登場してから20年を経過しているから,当然のことではある.6300系から9300系までは28年…阪神淡路大震災の影響も大きい….2800系から6300系は,なんと,たったの12年である!
9300系第6編成(現在は京都線も車号が阪急流に“0”から始まるので1の位の数字と編成の順位とが一致しない).行先・種別表示は第4編成からフルカラーLEDに変更.前照燈は第1編成が1燈ずつ独立していたのに対して第2編成以降は一体化されている.摂津市-南茨木 2019-6-1
さらに気になるのが,嵐山線内専用となっている6300系の行方.
9300系はすぐに廃車となるとは思えない.だとすれば編成を短縮して嵐山線に転用,6300系を淘汰して2扉車をなくすとともに直流モーター車を削減するという流れは,順当なことだろう.
13年前の桂駅留置線に屯する6300系の群.手前の第5編成“京とれいん”がデビューしたばかりの頃である.この時の取材成果はこの年5月号のMODELERS FILEでお目に掛けた.2011-3-19
さて,リリースには,編成表を含む諸元が詳しく記されている.
車号の上段が2300系,下段が2000系である.せっかくだから京都線用を通勤車の2代目ではなく特急車2800系の2代目にとすればよかったのにと思ったのだが,そうでない理由が,この編成表で理解できた.写真:阪急電鉄
諸元は下記のとおり
構体はアルミダブルスキン構造.製造担当は日立製作所.
2300系の定員は先頭車112名 中間車124名(座席指定サービス提供車両のみ40名)だという.のことから,発表されたイメージ図は座席指定サービス車ではないことが解る.
台車形式などは,来週発売される本誌11月号に紹介しているので参照していただきたいが,注目は主制御装置の項目.
2300系がハイブリッドSiC IGBT VVVFインバータ制御装置であるのに対して,2000系はAll-SiC MOS-FET VVVFインバータ制御装置となっている.
京都線(京阪)と神戸線・宝塚線(阪急)とでは伝統的に電気品のメーカーが異なる.前者は東洋電機製造であり,後者は東芝であった.リリースには明記されていないけれど,今回もそうに違いない.それを裏づけるように“阪急電鉄新型車両向け電気品納入開始について”と題されたリリースが,10月6日付で東芝インフラシステムズ(東芝)から発表された.これによって,2000系の主制御装置がSiC素子適用の東芝であることが確定した.では2300系はといえば……三菱電機や日立ならばSiC適用システムとなるだろうしと考えると,東洋電機製造しか考えられないではないか.
新京阪精神,いまだ健在!ということになろうか.
2024年夏にデビューだというから,春には姿を見せることだろう.楽しみが,また一つ増えた!
少しでも阪急電車に関心のある方ならば,2300系が京都線,2000系が神戸線,宝塚線用であることだろうという想像がついたことだろう.
それにしても2300系と2000系だなんて,時計の針が60年分以上も逆回転したような…と思った方も少なくないだろう.僕もそのひとりである.
もちろん冷静な頭では,10年前には1000系と1300系がデビューしているのだから,今回も“二代目”である,と,理解はしている.してはいるけれども,でもある.
外観.現代の1000・1300系の流れは汲むものの,正面窓下辺の曲線が目新しい.これによって“疾走感”を醸し出す効果を狙っているという.写真:阪急電鉄
ちょうど10年前,西宮北口の車庫でお披露目された時の1000系.1/500秒ではLED表示の文字が少し欠けてしまった.MODELERS FILEでの詳報は2015年1月号.2013-11-22
こうっやって見比べてみると,下辺だけではなく車体外側が下に向けてすぼまっていること,前照燈の位置が下がっていること,それに伴って屋根と車体との間の塗り分け線が変更されていることなど,いろいろ気がつくことが多い.
そういえば貫通扉の開く方向が変っているようで,ノブの位置が動いている.
続いて室内はといえば
中間に仕切を入れた腰掛は,内壁などの色遣いを含めて1000・1300系と同様にみえるが,半透明の素材を使った袖仕切りが新しい.写真:阪急電鉄
先頭車輛の車椅子スペースが拡大されている.手摺が2段になり,車椅子固定具を新設し,吊り手の色を変更するとともに取り付け高さを低くしている.写真:阪急電鉄
そしてクロスシートのイメージ図も添えられた.これは“京都線の新型特急車両として2300系”ということである.最初は見出しの“京都線では大阪方から4両目に当社初となる座席指定サービスを導入”に惑わされて4号車だけのことかと思ったのだけれど,どうやら8輛全部がクロスシート(転換式セミクロス)となるようだ.
1本脚が特徴の腰掛は9300系のイメージ.背摺上部の枕部分にも共通性が感じられる.側扉脇のヒップレストは面積が広くなった.写真:阪急電鉄
さてこれで気になるのが,9300系との関係.今回の発表では“いつまでに何編成”という長期計画は示されていない.けれど,登場してから20年を経過しているから,当然のことではある.6300系から9300系までは28年…阪神淡路大震災の影響も大きい….2800系から6300系は,なんと,たったの12年である!
9300系第6編成(現在は京都線も車号が阪急流に“0”から始まるので1の位の数字と編成の順位とが一致しない).行先・種別表示は第4編成からフルカラーLEDに変更.前照燈は第1編成が1燈ずつ独立していたのに対して第2編成以降は一体化されている.摂津市-南茨木 2019-6-1
さらに気になるのが,嵐山線内専用となっている6300系の行方.
9300系はすぐに廃車となるとは思えない.だとすれば編成を短縮して嵐山線に転用,6300系を淘汰して2扉車をなくすとともに直流モーター車を削減するという流れは,順当なことだろう.
13年前の桂駅留置線に屯する6300系の群.手前の第5編成“京とれいん”がデビューしたばかりの頃である.この時の取材成果はこの年5月号のMODELERS FILEでお目に掛けた.2011-3-19
さて,リリースには,編成表を含む諸元が詳しく記されている.
車号の上段が2300系,下段が2000系である.せっかくだから京都線用を通勤車の2代目ではなく特急車2800系の2代目にとすればよかったのにと思ったのだが,そうでない理由が,この編成表で理解できた.写真:阪急電鉄
諸元は下記のとおり
構体はアルミダブルスキン構造.製造担当は日立製作所.
2300系の定員は先頭車112名 中間車124名(座席指定サービス提供車両のみ40名)だという.のことから,発表されたイメージ図は座席指定サービス車ではないことが解る.
台車形式などは,来週発売される本誌11月号に紹介しているので参照していただきたいが,注目は主制御装置の項目.
2300系がハイブリッドSiC IGBT VVVFインバータ制御装置であるのに対して,2000系はAll-SiC MOS-FET VVVFインバータ制御装置となっている.
京都線(京阪)と神戸線・宝塚線(阪急)とでは伝統的に電気品のメーカーが異なる.前者は東洋電機製造であり,後者は東芝であった.リリースには明記されていないけれど,今回もそうに違いない.それを裏づけるように“阪急電鉄新型車両向け電気品納入開始について”と題されたリリースが,10月6日付で東芝インフラシステムズ(東芝)から発表された.これによって,2000系の主制御装置がSiC素子適用の東芝であることが確定した.では2300系はといえば……三菱電機や日立ならばSiC適用システムとなるだろうしと考えると,東洋電機製造しか考えられないではないか.
新京阪精神,いまだ健在!ということになろうか.
2024年夏にデビューだというから,春には姿を見せることだろう.楽しみが,また一つ増えた!







