JR東日本の成田エクスプレス,愛称N'EXに使われていた253系電車は,昨年の夏に二代目であるE259系に代替わりした.
 お役後免 となった253系は,その“身の振り方”が注目されていたが,本誌の“いちぶんのいち情報室”や“甲種・特大運行情報”で既にお伝えしているとおり,3輛 編成2本が長野電鉄へ譲渡,サッカーのワールドカップか委細に際して増備された6輛編成2本(200番代として番号が区分されていた)は,東武鉄道乗り入 れ特急用に転進することになった.
 そして長野電鉄向けは引き渡された後,東急車輛へ入場して各種改造を受け,12月23日に逗子を発ち,翌日, 屋代の工場へ到着した.見たところ,ロゴマークが消された以外は大きな変化がなさそうに見えるけれども,恐らくは機器類やインテリアに手入れを受けている のだろう.披露が楽しみ.

一方,JR東日本の中で転用される2編成は,1本が大宮総合車両所へ,1本が東急車輛へ入場していたが,そのうち,東急車輛の分が長野電鉄向けと同じ日に出場,逗子からは自力で回送されたのだった.
 こちらも,外観的には,全く新しい塗装デザインを除けばパンタグラフも菱枠のPS26Aのままだし,大きな変化は見当たら……いや,正面貫通扉は埋められ,側扉脇の一部には側窓が増設され,なにより床下機器は真新しい.
 それでいつ,披露されるかと楽しみにしていたところ,本日,小山車両センターで報道公開が行なわれたのだった.

編成は新宿方からクハ253+サハ253+モハ253+モハ252+モハ253+クモハ252.営業案内状は,東武日光方が1号車,新宿方が6号車となる.

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東急車輛では第2編成の改造を担当.新しい編成番号はOM-N02.よくみれば,電動車ユニットの間にあったサハが,5号車に移動している.
 正面の列車種別表示装置はLED.E257-500番代のそれと寸法が似ているようにみえる.

客 室は,奇数号車と偶数号車とで表布の色が異なっている.偶数号車が鬼怒川渓谷や中禅寺湖をイメージした青,,奇数号車がレンゲツツジや紅葉をイメージした 橙.シートピッチは,これまでのJR側の乗り入れ車輛だった485系改造車と同じ1,100mm.その分,大形荷物の置き場が客室化されている.側扉脇の 増設窓は,それだったのだ.
 注目された,グリーン個室はどうなったかといえば,“業務用室”.すなわち,車販準備室というわけである.ちょっと残念かも.
 ちなみに,大形荷物置き場は全廃されたわけではなく,一部がベビーカーなども置くことができるよう,改良されて残っている.また荷物置き場の通路を挟んで反対側にはパウダールームが新設された.
 さらに,2号車には大型の車椅子対応トイレが新設された.隣接してやはり車椅子対応の洗面所と車椅子対応座席が設けられている.

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写真は偶数号車の客室.今までのどのJR東日本の車輛とも異なる印象.窓が大きくないというハンディを補って余りある明るい配色.

運 転室は貫通扉が埋められた以外,腰掛も含めて変化は大きくなさそう.もっとも,制御装置は最新のインバータ方式に総取り替えされている.装置の型番は SC96.主電動機は定格出力120kWのMT74(205系5000番代用と同じ).補助電源装置も交換されてSC98という形式になった.
 台車はボルスタレスのDT69とTR259を使っている.

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運転室の眺めはこれまでの253系とあまり変らないように見える.腰掛けもN'EXの時のままである.

注目の運転開始だが,4月16日と発表されている.それに先だって,2月12日には品川駅で,2月20日には東武日光駅で一般向けの車輛展示会が開催される.詳しい内容は,それぞれの会社のウェブサイト,またはetrain.jpのイベント・プレゼント情報室に掲載されている.

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報道公開の受付テーブルに置かれていた新仕様の253系プラレール車輛.“早くも新製品?”と思ったら大宮支社広報スタッフの手造り.意気込みが感じられる,微笑ましい演出だった.

追記(2011.01.22):既存の東武乗り入れ車485系と189系の処遇だが,報道公開の席上,本誌からの質問に対するJR東日本からの回答は次のとおりだった.
189系=廃車の予定 485系=転用の計画あり

さて,転用先はどこだろうか.いつ判明するのか.いきさきはどこか,想像をたくましくして待ちたい.