昨年11月18日付けのこのブログでご案内した,旧新橋停車場歴史展示室における東京駅ステーションギャラリーの企画展である,石川光陽の写真展.ようやく現地へ足を運ぶことができた.

こ の会場に展示された写真のほとんどは,平和な町の風景であって,“空襲記録写真家”というイメージを払拭するのに,充分な内容だった.いや,別に“空襲記 録写真家”という肩書き(?)が悪いわけではない.けれど,空襲の記録写真は,石川光陽が撮影した写真(約9,600カットといわれている)の,ほんの一 面に過ぎないことを,再認識させられたのだった.
 汽車や電車が写っていないカットを含めて,すべての写真に興味津々だったけれど,もちろんのこと,それらが写っているプリントの前では釘づけになったこと,いうまでもない.
  例えば上野の高架ホームを発車するC51 200や,なぜか1枚だけ紛れ込んでいる,北陸地方の機関庫前に佇む78695とか……(この78695は,解説にも“昭和初期には富山配置”とあるし, ランボード側面を白く塗っているので当時の名鉄局管内の機関車であることは間違いなさそう).

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ここに写っている6枚の写真のうち,中央上が78695.その右は上野駅コンコース.その下が発車するC51.78695の下は日暮里駅本屋.画面左上は御茶ノ水.その下が目罐電鉄五反田駅.

いずれの写真も,ファインダーを覗く撮影者の目は優しく,慈しみに満ちている気がする.前回のブログでも例に出した杵屋栄二さんの写真にも通ずるものがありそうだ.
 けれど,異なるのは,杵屋さんが汽車や電車を主体にした風景であるのに対して,ここに展示された写真のほとんどは,街の中の汽車や電車であること.
 もちろん,東日本鉄道文化財団の企画だけあって,風景の時代考証には完璧が期されてる.ホームに掲示された時刻から撮影年代を特定し,しかも,ちゃんとその根拠まで示されているのは流石である.
 そして,“トレインマーク”や“燕とその時代”,“日光道中”などと同様,今回も,写真の時代を語る資料やさまざまな“物”を展示し,参観者に“背景”を見せている.資料やものの選定も,まことに当を得ていて,ただただ感心させられる.

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ヱビスビールの瓶やタンブラーやジョッキ,栓抜きなど.資生堂パーラーの写真の前には,ちゃんとティーカップやポットが展示されている.心憎い演出だ.

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歴史展示室のエントランス.あなたにとって,この向こうは未知の世界?それとも懐かしの光景?

そ して今回,改めて感じたこと.それは,このところの旧新橋停車場での企画展は,企画している人たちの心意気が,観覧者に直接,伝わってくる展示だというこ と.昨年9月に正式スタートしたという,スタッフブログを読めば,ますますその感を深くすること,間違いない(このブログは,同財団のウェブサイトのトップ頁に大きく目立つバナーが貼ってある).
 ということで,今回も期待を裏切らない,期待以上に濃い内容である.一人でも多くの人に足を運んでもらいたい.


※展示室内は撮影禁止です.ここに掲載した写真は,事前に東日本鉄道文化財団の許可を得て撮影したものです.なお,今回は急な訪問だったので古いコンパクトカメラしか持っておらず,画質がいつもより劣ることをご了解いただければ幸いです.