今日が標準発売日の,とれいん2024年1月号.特集は“併用軌道から都市交通の未来を拓く! 日本の路面電車”

とれいん誌では,創刊以来なんども,さまざまな路面電車を,いろいろな角度から採り上げてきた.むしろ他誌よりも頻度が高いのではないかと思うほどに.

しかし,今回の特集は,600冊近い“とれいん”の歴史の中で,未曽有ともいうべきボリュームと充実度であろうと,自負するところである.
 最新の実物車輛では,躍進著しい,アルナ車両の“リトルダンサー”シリーズから“究極”を意味する“Ua”を与えられた富山地方鉄道のT100形と,最新の福井鉄道F2000形をピックアップ.三菱重工近畿車輌東洋電機製造が中心となって普及を目指す“JTRAM”である5車体連節の広島電鉄5200形を紹介.
F8A_3112
全長は軌道法の制約から30m未満に抑え込まれているけれど,やっぱり“5車体”の迫力はすごい……でも,この角度ではよく判らないだろう.
F8A_3137
ということで折り返しを待っていたのだけれど,うまく撮れなくて,後追いになってしまった.2020-11-22 広島駅前

そして2023年8月26日に開業したばかりの宇都宮ライトレールを,運転や施設の面を含めて総合的にガイドした.
 楠居利彦さんからは,想い出の路面電車を含めてコラムをいただいた.現代路面電車の傾向と現状は,今では斯界の第一人者である服部重敬さんと梨森武志さんにご出馬願った.
 これらを纏めてお読みいただければ,掛け値なしに,趣味的に見た日本の路面電車状況を把握していただけるものと思う.
 これらの中で僕が担当したのは,富山と福井と宇都宮.中でも宇都宮については,75年ぶりの完全新規建設路線として日本中から注目され続けている存在.取材と纏めには,おのずと力が入ろうというものである.実際,2021年の最初のお披露目から,建設途上の路線を何度か訪問するなど,仕事の域を超えての観察の結果をガイドできた.そして満を持して,開業人気がおさまった頃に,日常風景を観察して……と思っていたら,気がつけば10月があっという間に過ぎて11月になってしまった.もう後ろがない.
 ということで,天気図を睨みつけながら訪れた宇都宮.
 飛山城址と清陵高校前の間で日光連山をのぞみ,鬼怒川の川原へ出て雄大な橋梁を捉え,急勾配区間を表現し,そして駅前風景を…….約10分間隔で次々とやってくるとはいえども,11月の北関東の朝は遅く夕暮れはあまりにも早かった.それでも,充分に確保したつもりの頁数は撮影してきた写真と,見聞したレポートによって,あっという間に埋められてしまった.
 だから,ご紹介できたのは,ほんの一部ということになってしまった.近い将来に実施されると期待している急行(快速)運転が実現したら,ぜひとも,再レポートしたいと思っている.ご期待いただきたい.

さて,今回は,慌ただしい取材の中で出会った光景をいくつかご紹介してみたいと思う.
8AA_5805
最初は,清原市民センター前のバス停で見掛けた国鉄バス.

いえ,国鉄バス色リバイバル.2014年に東急バスから譲り受けた車輛で,移籍後すぐにこのカラーとなり.期間限定のはずが,いまもって,そのままの塗色で活躍しているのだそうだ.車体は富士重工の7Eタイプで,富士重工は2003年にバスボディから撤退しているので,バスとしては異例に車齢の高いボディということになる.齋藤さんには“出会えたのはラッキーでしたね”といわれた.
8AA_6371
車庫のある平石は当然のこととして,追い越し設備のあるグリーンスタジアム前にも,写真後方に見える通り,渡り線があって,折り返し運転を行なうことができるようになっている.

2日目には,初のラッピング編成が走りはじめる,ということが公表されていた.初日だから大丈夫……というのは,実は必ずしもそうではなくて,朝のうち少し走って入庫とか,夕方になってようやく顔を出す,などということも少なくないのだ.だから,油断大敵.
8AA_6047
そうしたら,朝8時前の清陵高校前を宇都宮駅方面に走り去って行った!

そこから類推して(入庫さえしなければ),何時ごろに戻ってくるか見当をつけて芳賀・高根沢工業団地にダッシュ!無事に形式写真をお目に掛けることができたわけである.
 しかしこれには落とし話があって,車体両面で異なるデザインであることに気づかず,齋藤さんの助けを借りることとなってしまった.さらに!初日だけは運転時刻が公表されていた!ことに,帰宅してから気づいてしまったのである.なんと.

車輛の機器について形式やスペックを知りたがるのは趣味人の性.僕もご同類ではあるから,できるだけ詳しく正確にお伝えしようと思い,鉄道事業者の皆さんには,いつもお手間をかけさせてしまっている.ご協力には大いに感謝している次第.でも,ご厚意に頼ってばかりもいられないということで,銘板などが読める場合には,その数値で確認して掲載させていただくことも少なくない.今回もいくつかの機器でそのようなことがあった.そのひとつがパンタグラフ.
 富山や福井とは,明らかに形態が異なるのだ.そこで,撮影した写真に見えたロゴのデザインを頼りにドイツのパンタグラフメーカーを検索し,同じロゴを発見できた時の嬉しさ!
8AA_6449
ドイツのパンタグラフメーカーから,このデザインのロゴを持つ会社を探し,製品写真と比較して“Schunk”であることに確信を持つことができたのは,締切の数日前のことだった.

2日目の撮影では少し時間を作って,宇都宮東公園を訪問してきた.2023年新年号のCoffee Cupで近況をお伝えしたけれど,それは自分自身のレポートではなかったから.
8AA_6488
ようやく色づいた銀杏並木のもと,七五三のおめかし姿を記念写真撮影に興じる家族連れを横に見てたどりついたEF57 7.公園周辺再開発の影響を受けるのではないかという懸念もあったが,どうやら杞憂だったようで,一安心.

最後にお詫びを.

この宇都宮ライトレールHU300形の愛称は“ライトライン”.欧文表記では“LIGHT LINE”なのだけれど,なにを思い込んでしまったのか,僕のMODELERS FILEでは,すべて“LITE LINE”と記しているのだ.御丁寧にロゴの写真の説明でも!諒にお恥ずかしい限り.大変失礼いたしました.