国鉄で車輛の設計を一手に引き受けていた組織がある.本社とは独立した,車両設計事務所である.同様,構造物は構造物設計事務所が担当し,長らく新宿の同じビルの中に事務所があった.
新宿駅の南口改札を出て甲州街道を渡り,細い道をさらに南に進むと,入口があった.後年になって気づいたのだけれど,この入口を含めて,敷地は公道に面していない,いわゆる袋地かそれに近かったのである.
僕がはじめてこのビルを訪問したのはいつだったか,もう正確には思い出せないが,恐らくは,まだ大阪の高校生だった昭和40年代半ば,黒岩(保美)さんを訪問した時だっただろう.以来,国鉄が分割される直前に東京駅隣接地に移転してしまうまで,何度となく通うことになった.昭和44/1969年に落成したというこの建物は,昭和38/1963年に竣工した丸の内の本社ビル新館と同様,外観も内装も,質実剛健という言葉がぴったり当てはまるようなデザインだったことは,よく覚えている.
JR発足後は,JR東日本の幾つかの部門が入居していたが,僕は足を踏み入れるチャンスがなかった.
そのビル……JR新宿ビルと名付けられていたこのビルの建て替えが発表されたのは令和4/2022年4月13日のことだった.
発表によれば,京王新宿駅から現在の“ルミネ”を経て甲州街道を跨ぎ,JR新宿ビルの南端……本社ビルのすぐ北側までを一体に再開発,街道の南側(南街区)には37階建ての高層ビルを新築,店舗,事務所,宿泊施設,駐車場などとして使うのだという.北側(北街区)は
完成予定は南街区が令和10年度,北街区が2040年代という.
再開発のリリースが発表された時には“記録しておかなくちゃ”と思ったものの,気がつけば解体のための仮囲いが始まってしまっていた.去年夏のことである.
甲州街道から南を向いて撮影.辛うじて“JR新宿ビル”の看板が屋上に残っていた.玄関は,白っぽい部分ではなく,その奥にあった.ちなみにその白い部分は全くの別棟で,今は宮崎県のアンテナショップ.
裏側というのだろうか,建物の西側.公道に面したビルが一足早く解体されていたので,その外観を拝むことができた.画面左端の建物は現在解体の真っ盛り.右側のビルは……のこるのだろうか? 2023-7-19
さて,とはいえ,ほかの写真を撮影するついでに撮ってないだろうかと検索してみたら,平成28/2016年7月28日のここで,新バスターミナル“バスタ”を紹介するエントリの冒頭にお掲載した写真の左端に映り込んでいた.
もうちょっと左を向いて撮影したカットはないのかと思ったが,なかった.屋上の鉄柵部分には,米国煙草の“Philip Morris”やカメラのオリンパス,三菱自動車が広告を掲出していた.山手線の電車が,まだE231系500番代である.2016-7-19
として“今日”,2024年1月18日の,JR新宿ビルの様子.撮影ポイントは線路を挟んだ対岸の高島屋前.
随分低くなったものだが,まだ完全に失われたわけではなさそうである.“丸八真綿”の看板が掛る建物も,間もなく解体が始まるのだろう,テナントは既に退去している.
どこか,この再開発敷地の全貌を見ることができるポイントはないものかと考え,思いついたのが新宿エルタワー.その28階にあるニコンのショールームから見下ろせるだろうと.訊ねてみたら,撮影してもよいという.持っているカメラは10年選手ながら立派なニコンのコンパクトデジカメP7700だから,そういう点に関して遠慮する必要は,ない.
そうやって撮影したのがこの写真.双眼鏡が映り込んでいるのはご愛嬌としていただくとして,画面右奥がJR東日本本社ビル,JR新宿ビルはその手前ブルーシートの部分.さきほどの丸八真綿の看板のビルがあって,その手前がルミネ.そして京王百貨店がある.
そして画面のほかの部分でも解体や建設工事がたけなわ.京王百貨店の並びは去年から解体中の小田急百貨店.駅前広場を挟んで右手は元の明治安田生命保険のビルが高層ビルに建て替え中.画面から外れた手前足元には,かつてスバルビルがあって,長らく空地だったが,先日からなにやら工事が本格化している.なんでも,地下駐車場への新しい出入口に変身するのだそうだ.
そのスバルビル跡地付近から東を見ると……
“かねふく”の看板が掛かるビルは,東口!のかつて“笑っていいとも”というTV番組で一世を風靡した“スタジオアルタ”である.
そんなことあってあるのかいと,少しエルタワー側に戻って歩道橋に上がってみると……
新宿駅東口駅ビル……かつてのマイシティ,今のルミネエストが,丸見え.
実はこの現象は,去年夏からのことで,7月には撮影していたのだけれど,半年を経ても,ほぼ変っていないことが判ったので,再度記録した次第.
そして最後にお目に掛けるのが,2022年10月2日に営業を終了した直後の小田急百貨店新宿店本館の麗姿.
昭和42/1967年11月23日にこの建物での営業を開始したのだそうだ.新ビルは令和11/2029年に完成の予定という.あと5年.2022-10-11
今回は,車輛のお話どころか,その姿もほとんど出てこなかった.でも,駅は旅への入口であり出口.その姿や変化を記録するのも,立派な鉄道趣味の一分野に間違いはなかろう.
新宿駅の南口改札を出て甲州街道を渡り,細い道をさらに南に進むと,入口があった.後年になって気づいたのだけれど,この入口を含めて,敷地は公道に面していない,いわゆる袋地かそれに近かったのである.
僕がはじめてこのビルを訪問したのはいつだったか,もう正確には思い出せないが,恐らくは,まだ大阪の高校生だった昭和40年代半ば,黒岩(保美)さんを訪問した時だっただろう.以来,国鉄が分割される直前に東京駅隣接地に移転してしまうまで,何度となく通うことになった.昭和44/1969年に落成したというこの建物は,昭和38/1963年に竣工した丸の内の本社ビル新館と同様,外観も内装も,質実剛健という言葉がぴったり当てはまるようなデザインだったことは,よく覚えている.
JR発足後は,JR東日本の幾つかの部門が入居していたが,僕は足を踏み入れるチャンスがなかった.
そのビル……JR新宿ビルと名付けられていたこのビルの建て替えが発表されたのは令和4/2022年4月13日のことだった.
発表によれば,京王新宿駅から現在の“ルミネ”を経て甲州街道を跨ぎ,JR新宿ビルの南端……本社ビルのすぐ北側までを一体に再開発,街道の南側(南街区)には37階建ての高層ビルを新築,店舗,事務所,宿泊施設,駐車場などとして使うのだという.北側(北街区)は
完成予定は南街区が令和10年度,北街区が2040年代という.
再開発のリリースが発表された時には“記録しておかなくちゃ”と思ったものの,気がつけば解体のための仮囲いが始まってしまっていた.去年夏のことである.
甲州街道から南を向いて撮影.辛うじて“JR新宿ビル”の看板が屋上に残っていた.玄関は,白っぽい部分ではなく,その奥にあった.ちなみにその白い部分は全くの別棟で,今は宮崎県のアンテナショップ.
さて,とはいえ,ほかの写真を撮影するついでに撮ってないだろうかと検索してみたら,平成28/2016年7月28日のここで,新バスターミナル“バスタ”を紹介するエントリの冒頭にお掲載した写真の左端に映り込んでいた.
もうちょっと左を向いて撮影したカットはないのかと思ったが,なかった.屋上の鉄柵部分には,米国煙草の“Philip Morris”やカメラのオリンパス,三菱自動車が広告を掲出していた.山手線の電車が,まだE231系500番代である.2016-7-19
として“今日”,2024年1月18日の,JR新宿ビルの様子.撮影ポイントは線路を挟んだ対岸の高島屋前.
随分低くなったものだが,まだ完全に失われたわけではなさそうである.“丸八真綿”の看板が掛る建物も,間もなく解体が始まるのだろう,テナントは既に退去している.
どこか,この再開発敷地の全貌を見ることができるポイントはないものかと考え,思いついたのが新宿エルタワー.その28階にあるニコンのショールームから見下ろせるだろうと.訊ねてみたら,撮影してもよいという.持っているカメラは10年選手ながら立派なニコンのコンパクトデジカメP7700だから,そういう点に関して遠慮する必要は,ない.
そうやって撮影したのがこの写真.双眼鏡が映り込んでいるのはご愛嬌としていただくとして,画面右奥がJR東日本本社ビル,JR新宿ビルはその手前ブルーシートの部分.さきほどの丸八真綿の看板のビルがあって,その手前がルミネ.そして京王百貨店がある.
そして画面のほかの部分でも解体や建設工事がたけなわ.京王百貨店の並びは去年から解体中の小田急百貨店.駅前広場を挟んで右手は元の明治安田生命保険のビルが高層ビルに建て替え中.画面から外れた手前足元には,かつてスバルビルがあって,長らく空地だったが,先日からなにやら工事が本格化している.なんでも,地下駐車場への新しい出入口に変身するのだそうだ.
そのスバルビル跡地付近から東を見ると……
“かねふく”の看板が掛かるビルは,東口!のかつて“笑っていいとも”というTV番組で一世を風靡した“スタジオアルタ”である.
そんなことあってあるのかいと,少しエルタワー側に戻って歩道橋に上がってみると……
新宿駅東口駅ビル……かつてのマイシティ,今のルミネエストが,丸見え.
実はこの現象は,去年夏からのことで,7月には撮影していたのだけれど,半年を経ても,ほぼ変っていないことが判ったので,再度記録した次第.
そして最後にお目に掛けるのが,2022年10月2日に営業を終了した直後の小田急百貨店新宿店本館の麗姿.
昭和42/1967年11月23日にこの建物での営業を開始したのだそうだ.新ビルは令和11/2029年に完成の予定という.あと5年.2022-10-11
今回は,車輛のお話どころか,その姿もほとんど出てこなかった.でも,駅は旅への入口であり出口.その姿や変化を記録するのも,立派な鉄道趣味の一分野に間違いはなかろう.