とれいん2024年4月号は,もう見ていただけただろうか.
 東京地下鉄から日比谷線用03系の,4社目の譲渡車として上毛電鉄の800形をMODELERS FILEで採り上げた.僕にとって日比谷線の印象は3000系ではあるのだが,それはもう遠い歴史の世界になってしまったようである.
 現に,譲渡先のひとつである長野電鉄では,元3000系が03系で置き替えられている.
 3000系といえば,京王帝都電鉄井の頭線の3000系も,かつて各社に譲渡されて活躍を続けてきたが,今回の03系譲渡によって,松本電鉄ではなくアルピコ交通では元東武20000系によって4編成中3編成が置き替えられている.
 また,北陸鉄道浅野川線では,井の頭3000系の牙城だったのが,これまた03系への置き替えが終わった.
 そして今回の上毛電鉄への譲渡である.ここでも20年以上もの間,京王帝都3000系の独壇場だったところへの登場であり,同社として初のインバータ制御車でもあり,大いに期待されてデビューといえよう.
 
ということで,久し振りに出向いた上毛電鉄線である.2月14日に開催された報道公開の様子は,翌日のここでお伝えした.
 その時点でMODELERS FILEの題材として採り上げることは決まっていたわけで,例によって補強取材のために,都合3度の追加訪問を敢行することとなった.そこで,今日はその間に見掛けた,上毛電鉄線の日常の一部をご紹介してみようと思う.

報道公開の終了後,真横や屋根上を追加撮影するための下見を兼ねて,大胡から先,西桐生方面へ向かった.恥ずかしながら,初乗車である.
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赤城駅で並んだ上毛727と東武桐生線の12258.特急“りょうもう”としてリバティこと500系もやってくる.

桐生の一帯は鉄道路線の密集地でもあって,この駅から歩いて行ける範囲には,わたらせ渓谷鐵道の大間々駅がある.実際,この赤木駅の駅本屋外壁には……
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“赤城駅”の上にひらかなで“おおまま”とも記されている.駅名としてではなく,旧大間々町の中心地域であることを示す表記であるようだが.両毛線の岩宿駅までは,歩いて行くには,ちょっと遠いか.

東京地下鉄03系の,両毛電鉄線への搬入は陸送ではなく,千住から線路上を経由した.どこに接点が?と思ったのも,赤城駅を訪問した目的のひとつだった.
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その答が,これ.画面左が上毛電鉄線,右が東武線.さらにその右の線路は東武の留置線.上毛電鉄線と東武線との間に,ちゃんとシングルスリップが生きている.

上毛電鉄の全面的なご協力によって,2月の18,19日に真横や屋根上を撮影することができた.列車写真や表紙向けの写真も,なんとか抑えることができた.でも…….
 やっぱり行先表示は“試運転”や“回送”ではなく,営業状態がよいのに決まっている.でも2月は短くて締切が早い.おまけに,営業運転は平日の中央前橋と大胡の間の1往復だけ! どうしよう…….
 まぁでも,とにかく本文の目処を先にたてておいて,初日に賭けるしかないでしょ.
 ということでまだ暗いうちに起き出して向かった上毛電鉄線.途中の車窓から見上げる空には雲が拡がっていて,どうなることかと思ったのだが,目星をつけていた上泉駅の東側に到着する頃には,ほぼ雲ひとつない快晴となった.上州名物からっ風も,ない.
 そればかりか眼前の左から右へ,秩父山塊,荒船,妙義,浅間,榛名,赤城はもちろんのこと,その奥には中央アルプス?いや八ヶ岳か?そして榛名の右には谷川連峰が.気が回らなくて東の方を観察しそこねたのだけれど,もしかしてたぶん,筑波も見えていたかもしれない.
 こんなにめでたい門出は,なかなかそうそう,あるものではない.

ここからの写真は,クリックした時の大きさがいつもより大きいです.ご注意ください.
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“本番”直前の西桐生行き711編成.画面右が妙義で左に浅間と妙高が.
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妙義と浅間と榛名と,そして谷川連峰.手前,桃ノ木川に架かる下路桁は昭和40年3月のトピー工業製.銘板にはKS-12,支間31.4m,傾斜角48度37分とあった.
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谷川連峰のアップ.撮影地点からの距離は60キロ程度だろうか.
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最初はアルプスかと思ったのだが,帰宅後に地図で確かめたら,八ヶ岳だった.赤岳,横岳,硫黄岳のようだが,自信はない.距離は谷川よりさらに遠く,80キロはありそうだ.

目的を果たした後,居合わせた同好の士にお訊ねしたら,浅間妙義はともかく,谷川や八ヶ岳はいつも見えるわけではない,とのことだった.本当にラッキーであった.

この幸運が,いつまでも続きますように!