3月1日の午前,銚子電鉄の仲ノ町駅で30年振りの“中古の中古ではない”電車2編成目のお披露目が催された.

種車は元南海電鉄の2200系いや22000系か.

銚子の駅から仲ノ町へ向かって歩いていたら踏切が鳴った.目の前を通過して行ったのは昨年3月にデビューし,とれいん誌の2024年5月号で詳報した第1編成.デハ22008とクハ22007の編成だった.
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追いかけて駅に到着したら,この日にお披露目する予定の第2編成と仲良く並んでいた.

待つことしばし.出発式のセレモニーは10時から始まった.
 梶谷知志南海電鉄取締役鉄道事業本部長,台湾のYou Tuberで銚子電鉄アンバサダーのリンリンさん,そして竹本勝紀銚子電鉄代表取締役のあいさつとともに愛称……嵐に遭って銚子に流れ着き,漁業技術の伝承や漁港の建設に貢献したという“次郎右衛門”……のお披露目が行なわれた.
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ヘッドマークの除幕を終えて満面の笑顔を見せる竹本社長.
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テープカットならぬキップカットで前途を祝す.左からリンリンさん,南海電鉄梶谷鉄道事業本部長,越川信一銚子市長,竹本社長.

さてこの第2編成,南海電鉄時代はモハ2201+モハ2251で,銚子方から22005+22006となった.

塗装はご覧の通り,現行の南海標準色で,では特徴は?

それは車内にあった.
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外川方の22006客室.扉間はロングシートだが,前後にボックス席が.そして腰掛の表地は魚の柄に…….織でも染でもなくインクジェットプリントによる表現だという.吊手は木製の魚.
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運転室直後の“かぶりつき”シート.表地はもちろん悠々と海を泳ぐ魚の大群.よぉく見ると,“隠しキャラ”も仕込まれている.
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22006の連結寄りにしつらえられたボックス席でくつろぐリンリンさん.

では銚子方の22005はといえば…….
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一面のひまわり畑.腰掛のレイアウトは22006と同じである.吊手は木製で一部は猫である.こちらの腰掛にも隠しキャラが仕込まれている.
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内壁には猫に小判…….なんで猫なのかと訊ねたら,むかし,外川の街は魚が目当ての猫が溢れていたのだとか.


このようなアイデアはどこから?と思ったら,南海の“天空”も参考にしつつ,社員総出で話し合って議論して決めていったのだという.さっきから,至るところに“愛がある”と思っていたのだが,それを聞いて,すごく納得した僕である.
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そんなアイデアの山を丹念に具体化していったのが,この銘板の主である,京王重機の皆さん.


セレモニーに続いて外川まで1往復の試乗会.車内から早咲きの桜やさまざまな生育状態のキャベツ畑を眺めていたら,あっという間に終点.
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終点ではデハ801がお出迎え.元は伊予鉄道の電車で,1985年から2010年まで銚子で働き,廃車後もこのように美しい状態で保存されている.

そして仲ノ町での解散後は少し待って銚子駅までのひと駅区間を乗車,全線完乗を果たすことができたのだった.
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やってきたのは3001“澪つくし”.元伊予鉄道700系,元をたどれば京王帝都のデハ5103である.このあたりは早川昭文さんによる“京王初代5000系譲渡車(レイルNo.104)”に詳しい.

さて“次郎右衛門”こと22005+22006は,4月1日から営業運転をスタートする予定だという.これで同社の悲願だった4編成体制が確立することになる.すぐに増発が行なわれるわけではなく,検査予備の充分な確保に充当されるが,しかしいずれは増発も検討……と,竹本社長はニコニコと語ってくださった.楽しみ!