今から1年半ほど前の2023年10月5日のここで第一報をお知らせした,“西武線に小田急電車がやってくる”というお話.11ヵ月前の2024年5月23日には現車が到着,10月3日には8000系への改番と車体外部デザインをお伝えした.

それから半年,ようやく“西武鉄道8000系”が,今日,4月10日の朝,僕の目の前に現われた.
 “○○駅で見たよ”とか,“さっきすれ違った”,などという話を各方面から何度も聞かされて,ジリジリしていたのは,本当のことである.
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南入曽車両基地19番線でポーズをとる西武鉄道8000系“第3”編成.写真は飯能・西武新宿方先頭車のクハ8103.池袋・本川越方に向けてモハ8203,サハ8303,モハ8403,モハ8503,モハ8803,モハ8903,クハ8003と続く.

種車は8103が元8561で以下順に8511,8461,8311,8211,8261で,1985年の東急車輛製である.小田急電鉄8000形とは……ここの読者の皆さんなら先刻ご承知かとも思うが,1982年にデビューした,小田急最後の鋼製通勤電車である.主回路装置は回生ブレーキつきの界磁チョッパ.全部で160輛が製造された.2004年からはインバータ制御への更新下実施され,6輛編成では4M2Tから3M3Tに変更,電動発電機もSIVに換装,車体も大規模修繕を実施…….
 最近まで全数が活躍を続けてきたが,さすがに廃車の声が聞こえ始めたときに,西武への譲渡の話が持ち上がった…….
 なお,残念ながら売り切れてしまったが,とれいん誌では2011年6月号(通巻438号)のMODELERS FILEでこの電車を採り上げている.
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小田急時代のインバータ制御化で電装解除された8303.この側面だけ見ていると“戸袋窓付きの30000系”に,見えなくもない.車号は幕板と車体裾の2ヵ所に表示されている.床下には蓄電池箱を新設している.

もちろん細かい点を観察してみれば,空調装置は分散式だし,なにより台車がアルストム式である.西武では初お目見えの方式だが,既に扱いのノウハウは得ているとのことであった.
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客室は,一見したところでは小田急時代と同じではないかとも感じる.しかし車端部の腰掛は従来の4人掛けから3人掛けに変更されている.当然その部分の腰掛は新調されていることになる.

客室中央部の腰掛は,この編成では痛みが少ないので小田急時代のままである.だから“変わらない”と見えるわけだが,新調部も表地の色は臙脂系で在来の色と変わらない.それもそのはず,改造整備担当が小田急エンジニアリングの出張施工であると聞けば,大いに納得できるところである.
 その他の変更点は防犯カメラの設置と照明のLED化,各種案内ステッカーの一部更新,天井肩部の広告取付枠下部の新設など,そのつもりで探索してみれば,さまざま変更されている.
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運転室と客室との仕切.吊手は在来品の活用だが,壁面の黄色いステッカーは新調…….さて,そのほかにはどこが新しくなっているだろうか.画面左上の銘板類は,2006年に施工された車体修理(いわゆるリニューアルまたは更新のこと)の“2006年 小田急車両”は,もちろんそのままだが,今回の改造銘板や車号類は,当然のこととして新しい.それ以外は,どこが活用され,どれが新しいのか,小田急時代の写真と見比べるなどして探索するのも一興だろうか.
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運転室.保安装置は当然のことながら交換されているが,メーターなどは活用されている.マスコン・ブレーキは左手操作のワンハンドル.西武オリジナルの20000系と同じである.

撮影が終了後,車内で質疑応答が行なわれた.
 サステナ車輛の候補車探索に際しては,JRを含めて,それこそあらゆる鉄道事業者が対象であったという.無塗装車が理想だったけれど,6輛編成については叶わなかったという.けれど,小田急8000形デビューの時の説明を覚えている僕にしてみれば,屋根や床がステンレス鋼製であり,側面も高耐候製鋼板製なのだから,ほぼステンレス車じゃないかと思ってしまうのであった.

関連質問として出たのが,現在の2000系や9000系の処遇について.
 8連の2000系を6連化しているのは,さらに古い2000系を取り替えるためであり,2030年までに直流モーター車を淘汰する目標がある以上,それより以降まで使用の予定はない.
 ごく最近になって列車種別・行先表示装置のLED化が始まった9000系については,既にインバータ化を済ませているので,2030年以降も使用を継続する予定.
 とのことであった.

そうそう,今後の8000系整備状況は,種車の状況を個別に判断して対応をとるとのことなので,趣味的にはいくつかのバリエーション違いが出現するかもしれない.楽しみなことである.でもそれはまだ先のこと.当面は5月末の営業運転開始で,より詳しく観察できる日が来ることを心待ちにしている.

4月11日:西武鉄道から定員についての数値をいただいたので追記.
   定員 座席(内訳)
8003 147   45
8903 157   54
8803 157   54
8303 157   54
8203 157   54
8103 147   45

小田急時代と比べ,両先頭車の総定員は変更ないが,そのほかはいずれも変更されている.

※2025.04.12:中間車車号訂正