前回に引き続き,富山の鉄道のお話を.
急行“能登”で金沢に到着した後,その足ですぐに富山まで戻り,その日は富山地方鉄道全線の乗りつぶ
しに1日を費やしました.本当はこの日に富山ライトレールと万葉線の回遊をしようと思っていましたが,「土・日・祝日限定」ルートだというのを直前に気が
ついてしまったので急遽予定変更となったのです.能登ではほとんど寝られなかったので,ふらふらの足取りで電鉄富山駅8時48分の電車に乗車します.な
お,富山地方鉄道全線(本線,立山線,不二越線,上滝線)をすべて乗車するのであれば,電鉄全線2日フリー乗車券(4,400円)がおすすめです.今回の
ように途中下車を何度もする場合はやはりフリー切符はとても便利.市内電車も乗車できるので,鉄道中心の旅の場合はかなりお得ですよ.
富山地方鉄道は
昔ながらのおもむきのある木造駅舎が多く残されています.一部区間,JR北陸本線と並行するところがあるのですが,2006年に北陸へ旅行した時に,JR
線の車内から一瞬だけ見たいくつかの渋い木造駅舎が忘れられなかったのです.木造「風」に建て直された駅舎ではなく,長年の風雪に耐え,昔からそこにずっ
とあって,地元の利用者の方々と共に歴史を見てきた「駅」.その時からずっと,富山地鉄の駅巡りは頭の片隅にありました.北陸新幹線の開業も迫り,付近の
人の流れや風景も変わってしまうのではないかと思い,今回思い切って訪れました.
というわけで,今回は駅舎めぐりがもうひとつの目的です.ただ,その一つ一つに寄っていたら,とても1日では回りきれません.いくつかピックアップして,下車しながら,かつ,全線乗りつぶすという行程を立てました.
下車した駅は,稲荷町,寺田,浜加積,西魚津,電鉄黒部,五百石,岩峅寺です.
他にも寄りたい駅はあったのですが,時間の関係で泣く泣くパス.思わず見つけた,いい感じの木造駅舎を電車の窓からただ指をくわえて通り過ぎてしまうのは
とてもやりきれない気持ちです.はたして,次に訪れるときまでこの駅舎はこのまま残っていてくれるだろうか….それほど,富山地鉄には惹かれる駅舎がたく
さんあったのです.
今回は本線の浜加積と西魚津駅を紹介します.
浜加積駅 滑川市曲淵
浜加積駅の場所はこちら(google マップに移動します)
田園地帯の中にある,小さいながらも存在感のある駅舎.屋根上部に三角屋根を配し,せり出した破風部分に駅名が掲げられています.また,庇の支柱下部が石造りの丈夫なもので,横にアクセントが入っているのが特徴.いずれも富山地方鉄道の駅舎でよく見られるスタイルです.
(上)ホームから駅舎へは数段の階段を下りる.ホーム上屋の柱には古レールが使われていましたが,その台座が苔むして,いまにも朽ち果てそうでした.あと何年冬の雪の重みに耐えられるのか心配になってしまいます.
(下)改札口 かつては荷扱いもあったことをうかがわせる段違いの改札窓口.狭い改札口や,サビサビの集札箱も味があります.
西魚津駅 魚津市住吉
西魚津駅の場所はこちら(google マップに移動します)
昭和11年開業当時からの駅舎.
庇の支柱や屋根の特徴は,浜加積駅とほぼ同じようなスタイル.
特
徴的なのは,駅名の書体.「魚」の四つ点が○なところや,ひねり具合がいいですね.開業当時はかなりモダンな印象だったのではないでしょうか.思わずイラ
ストレーターでトレースしたくなってしまいます(職業病…汗).右から書かれていて,もちろん「駅」も旧字.しかも小さな五角形の部分に控えめに描かれて
いるところが,奥ゆかしいです.
はぁ〜.たまりませんね.この書体は見たとたんに体中に電気が走り(?)かなり気に入ってしまい,次の電車がくるまでしばらく眺めていました.こういう何気ないところにもデザインセンスがチラッと輝いている駅は愛着がわきますね.
石積みのホームと,頑丈な上屋.待合室からホームまでずっと屋根が続いているところは雪国らしい
山側の少し高いところを北陸本線が併走しています.この画面の右側のところで富山地鉄はJR線をアンダーパスします.もしかしたら,私がJR線の車窓から見た木造駅舎はこの西魚津だったかもしれません.(見下ろし気味だったのは覚えているので)
春になるとこのあたりは色とりどりのチューリップが咲き誇り,立山連峰とチューリップ畑をからめて撮影できる有名スポットの近くです.
春にはまた冬とはガラリと雰囲気が変わるのでしょうね.
次回も富山地鉄駅舎めぐりは続きます!