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我 が家の引き出しに大事にしまわれている1本のカセットテープがあります.「駅」という題名で,片面30分,計60分です.1985年,アポロン音楽工業株 式会社が販売し,¥2,000であった.ということはテープの裏面からわかりますが,当時どのような状況で,どこで買ったのか,自分で買ったのかすら忘れ てしまいました.けれど,かなり聞き込んでいたことは間違いなく,今でもこのテープのことを折に触れて思い出すのです.
 
ナレーション, 音楽は一切なく,A面には西鹿児島駅・ホーム.B面には青森駅・ホームの音が入っているのみです.列車の入線,発車のアナウンス,レールのジョイント音, ホームを歩く人々の足音…….目をつぶって聴いていると,駅のベンチに腰掛けてあたかもその場にいるような感覚を味わえます.
 ただ1日のどこかの30分間を切り取って,通して録音しただけではなく,うまく編集されていているのが特徴です.

た とえば好んで聴いていた,B面の青森駅は,朝8時29分発車の盛岡駅特急「はつかり8号」の乗車案内アナウンスから始まり,弘前行き普通列車の発車.大館 からの普通列車の到着,上野からの急行「八甲田号」の到着,盛岡行き普通列車の発車…… と続き,上野からの特急「ゆうづる5号」の到着アナウンスにかぶ さるようにして,改札口付近の雑踏と駅員さんと乗客のやりとりが聞こえてきます.後半はまたホームに戻り,20時15分,「あけぼの6号」上野行きがホー ムから離れるところで終わります.青森駅の1日が30分に凝縮されているような感じです.
 当時,わけもわからず一生懸命聴いていた時は,青森な んてとてもとても遠い地のように感じていました.だけど,聞き慣れないアクセントの方言で次々と話される「大館」,「弘前」,「八戸」,「三厩」などの地 名や,列車ごとに違う機関車や電車のホイッスル,レールの継ぎ目を拾う音などを聴きながら「どんなところなんだろう」,「どんな列車が走っているのだろ う」と想いを巡らせ,楽しんでいたのです.
 特に,列車が到着するたびに流れる,

「お疲れさまでした.青森,青森です.駅出口は,到着した列車のうしろの方向です.函館行き連絡船にお乗りの方は,到着した列車のまえの方向へお進み下さい.連絡船は10時15分の出航.「十和田丸」です.」

という駅員さんの案内は,遠くから聞こえる青函連絡船の“ボ〜〜〜ッ”という汽笛の音と相まって,さらなる旅情をかき立てられたものです.

た だ,1つとても疑問に思っていたことがありました.盛岡方面,弘前方面のどちらから到着する列車の乗客に対しても,青函連絡船の乗り場は「到着した列車の 前の方向へ,駅出口は到着した列車のうしろの方向へ」と案内しているのが不思議でなりませんでした.連絡船の乗り場はいったいどこにあるのだろうか,青森 駅の構造はどうなっているのかな?と思っていました.

それは,このテープを初めて聴いてから,20年以上経ったのちにその謎を手に取るように理解することになるのです.

青森駅はスイッチバック構造になっていて,ホームに入ってくる列車はすべて,北海道の方へ先頭を向けて停車するのということがわかったのでした.
  青函連絡船の廃止は1988年ですから,当時の名残はどれだけ残っているのかと思いましたが,テープのアナウンスで聴いた通りに“到着した列車の前の方 向”へ長いホームをずっと歩いていくと,連絡船への跨線橋はまだ残されていました.かつてこの跨線橋を我先にと連絡船へ急ぐ人々で賑わったのでしょうね.
 連絡船の情景はなくなってしまったけれど,函館行きの特急も1日に何本も発着していますし,本州から北海道へ渡る拠点の駅であることに変わりはないのです.

いよいよ来年2010年12月には東北新幹線の八戸〜新青森間延伸で,東北新幹線が全通することになります.これにより,並行在来線の八戸〜青森間は第三セクター「青い森鉄道」が経営を引き継ぐことになります.青森駅はまた一つ大きな変化を迎えます.
 時代の流れと共に変わってゆく青森駅の今後を見守りたいと思います.

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青森駅 駅舎 初めて青森駅の改札を通った日.長年思い描いていた青森駅の情景をやっと目で確認することができた. 2007-1-1

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かつての連絡船への跨線橋.ホームから階段へは板でふさがれているため上がることはできない.2007-1-1

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出発を待つ大阪行き「日本海」 画面の右奥がかつての連絡船乗り場へ続く階段 2007-1-1