梅雨明け以来,連日の猛暑続きで体調を崩される方もいらっしゃるようですが,皆様お変わりありませんでしょうか.
 さて客車列車がほとんど淘汰さ れてしまった昨今,機関車自体が貴重な存在となりつつあるようで,当ブログを初めとして実物の話題に占める機関車ネタの割合がずいぶん高くなっています. そこで今回は(半ば強引ですが…),半世紀以上前に米国で活躍した電気機関車の話題をご紹介したいと思います.
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米国東部に君臨したペンシルヴァニア鉄道(PRR)では,ニューヨーク,フィラデルフィアなどの大都市を有する北東回廊(North East Corridor)地域に,アメリカの鉄道としては珍しく長大な電化区間があり,20世紀前半から様々な形態の電気機関車が旅客,貨物列車の牽引に活躍し ていました.
 そんな中でも最も有名なのは,独特な流線型車体のGG1でしょう.
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1934年から140輛近くが生産され,PRR消滅後も旅客用はアムトラック,貨物用はペンセントラル鉄道へと引き継がれて1980年代まで長く活躍しました.
 ちなみにGG1のデザインは名高い産業デザイナー,レイモンド・ローウィによるものと思われている方が多いようですが,実際にこの形式で彼が関わったのは,車体のピンストライプ塗装など部分的なところだったようです.
 上写真はホビーセンターカトーのNゲージ製品(8月号新車登場で紹介)で,戦後のシングルストライプ塗装を再現したものです.
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さて傑作GG1の登場以前,PRRには独特な軸配置の電気機関車が多数活躍していましたが,その中のいくつかを古いHOブラスモデルでお目にかけます.まずは上写真のL5.
 凸型の上回りに,下回りは大きな動輪がむき出しとなった内側固定台枠,しかも動輪は前後からロッドで駆動するという,現代の機関車を見慣れた目にはとても奇妙な形態ですね.
 これは,当時の電気機関車が蒸気機関車の足回りを真似て作られていたのと,馬力の大きいモーターが動輪間に収まらず、床上からロッドやギヤで駆動せざるを得なかった事情によるものでしょう.
 実際,この軸配置を米国流に標記すると2-8-2となりますが,形式にある“L”というのは,ペンシーが2-8-2軸配置の蒸機形式に当てていたアルファベットなのです.
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続 いては背中合わせに2車体連結となったDD1.ニューヨークのペンシルヴァニア駅(Penn Station)周辺には長いトンネルがあるため,駅に進入する旅客列車牽引のために開発された機関車で,第三軌条から集電する方式を採用しています.こ れも“D”というのは4-4-0軸配置の蒸機に付けられていた形式名で,これが2つ合わさったということで“DD”となるわけです.
 同様に,前述のGG1は4-6-0軸配置“G”が2セットということで“GG”.こうした形式の付け方のルールが分かって来ると,PRRの機関車もより楽しめますよ.
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最後に4-6-4軸配置のP5.ペンシーでは4-6-4の蒸機がなかったので“P”と付いた蒸機は存在しませんが,このP5はGG1の先輩格として成功した客貨両用形式で,1931〜35年に計92輛が作られました.
 写真の機関車は極くおとなしい箱形車体ですが,センターキャブで流線型凸型車体を纏ったグループ(P5a)もあり,このあたりもGG1に通じるところです.
 暑さにかまけて,手持ちのHOブラスモデルをだらだら並べてみましたが,いずれも塗っていないのが心残りなところ.本誌記事にかこつけて一台でもこれから塗ってやろうかと画策中です.近々誌面でお見せすることができるかどうか… どうぞご期待ください.