台湾は日本に良く似た風土の亜熱帯の島国で、かつての日本統治時代に多くの路線が敷設された経緯もあって、車輛や施設に往年の日本文化が日本国内以上に色 濃く残っているところが趣味的にも面白いところです。そうした台湾鉄道の中でも、ちょっと異色な路線に焦点をあてたDVDが発売されました。
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このたび南洋物産から発売されたDVD、“世界最速の軽便鉄道、台東線光華号に乗る”では、1982年の台東線改軌前、762mm(2フィート半)ゲージだった頃の貴重な映像と音声が収められています。
 台湾の鉄道敷設は、清国時代の1891年に基隆〜台北が開業したのに始まり、1895年に始まった台湾総督府時代には、比較的平地が開けている西側を中心に、縦貫線など多くの路線が整備されました。
  いっぽう3000m級の山々が海岸線近くまで迫る東側は、都市も少なく、1924年になってようやく花蓮〜台東間が全通しましたが、これはいわゆる“ニブ ロク”といわれる軽便路線でした。この狭い線路幅のために戦後もなかなかスピードアップができなかったのですが、1960年代になって東急車輌製の気動車 や日本車輌のDLが導入されると、最高時速80kmの高速運転が行われるようになりました。
 本作ではそんな台東線の沿革を紹介するとともに、1982年に1067mmゲージに改軌される直前に乗車して撮られた貴重な映像が収められています。
  恐らく8mmフィルムで撮られたのでしょう、映像はカラーですが、音声は別に録音されたものを編集で合わせています。しかし、段々とスピードを上げてゆく うちにもの凄い勢いで流れてゆく車窓風景や、バスように通路の狭いクロスシートの室内、前面の貫通窓から覗いたスリリングな前面展望など、鉄道ファンなら 釘付けになりそうな映像がふんだんに収録されています。
 車窓は木々が亜熱帯のものであることを除けば、遠景に常に緑の山々が見えているところなど日本の風景そっくりですし、線路は改軌寸前で外側に新しいレールが敷かれ、駅構内には付け替え用のポイントが並べられたりしていて、当時の状況を知るにも良い記録でしょう。
  しかし一番の見所は、この“光華号”のスピード感です。かの宮脇俊三氏が著書のなかで、“80km/hを超えるとやめてくれ,と叫びたくなる”と書き残し ているそうですが、恐らくレール一本あたりの長さも短いのでしょう、フルスピードで走ると車内は猛然と揺れ、ジョイント音はまるで工事現場のように賑やか に響き渡ります。
 もちろん私は台湾に行ったこともありませんし、国内の762mmナロー線もめぼしいところでは近鉄時代の北勢線くらいしか乗っ たことがありません。でも最高時速がおよそ70km/hくらいと言われる北勢線ですら、先頭の長い車輛に乗っていると車体が首振り方向にギシギシ揺れると いう、スタンダードゲージの車輛ではありえないような揺れ方を経験したので、当時の“光華号”は、さぞかしスリリングな乗り物だったのだろうなあ…
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近鉄時代の北勢線,終点近くの駅(麻生田?)にて。その後阿下喜方面の駅は何駅か廃止され,現在では駅間がずいぶん長くなっている。2002-4-12