日本の鉄道車輛から“等級帯”が消えて何年経つだろうか.そもそも“等級”という概念そのものが,ない.
消滅したのは,1等,2等がグリーン車,普通車という呼び方に変更された昭和44/1969年春のことである.
一方,日本以外の各国では依然として1等,2等が健在である.新しく設定された列車では飛行機のような“プレミアム”とか“ビジネス”,“エコノミー”などという呼び方にかわっていてヤヤコシイけれど,“クラス”制であることには違いない.
複等級制を運用するためには,乗客に対して等級区別を示す必要がある.多くは出入口の上や脇に数字で“1”とか“2”とか記すことによって案内している.
一時期日本の一部鉄道で側扉の順番を示す数字を表示したことがあるが,これは世界標準的にはまったく無意味どころか混乱を招くもと.“日本ローカルのデザ
インだから”と説明されたけれど,外国からの乗客が皆無ではあるまいに,デザインの遊びに過ぎない表示を行なうべきではないだろう
さて,なにを今さら等級……と思われる方もおられよう.確かに唐突である.でも,唐突にもちゃんと理由はあって,つい先日,夏休み明けの“チムニー”にお邪魔したおり,店長から“この製品,どこがおかしいか判りますか?”と問われたことに端を発している.
さて,どこがへんなのか,写真をお目に掛けるが,すぐにおわかりになるだろうか.

これが問題の製品.フランス国鉄のタイプY 1・2等合造簡易寝台車(クシェット).青と明灰色の塗り分けで“casquette(帽子)”ロゴ入り.さてえ……??
答えは,側扉脇の数字による等級表示が1等と2等とが入れ替わっていること.一方,幕板に示された等級帯の色は正しい.
幕板の等級帯……欧州大陸各国では,3等級制から2等級制に移行する1950年代半ばごろから,幕板に色帯を入れて等級表示を保管しはじめた.初期にはほ
とんど白に近い黄色だったり,あるいは時期によってオレンジだったりしたようだが,ほとんどの国では帯があるのが1等で2等は帯なしだった.
例
外はフランス.いつのころからか,1等の黄色に加えて2等に緑の帯を入れはじめたのだ.あるいはデザイン処理の必要から入れはじめたのかもしれないが,こ
ちらはちゃんと意味もあること.いつ始まったのかまだちゃんと調べてはいないが,1960年代から1970年代にかけて量産された,UIC-Yと呼ばれる
標準客車に塗り分けを施した1970年ごろからではないかと思う.1970年代半ばに登場したCorail(コラーユ)客車にもそれは引き継がれ(位置は
幕板から屋根部に移動したが),さらには2等に格下げされたTEE客車の幕板にもこの帯は巻かれた.

1987年2月のフランクフルト中央駅.コラーユ客車だけで編成されたパリからの急行に組み込まれていた1・2等車.窓幅が広く,間隔も開いている画面右側が1等で,窓上の黄色帯が見えるだろう.

上の写真から2年後,同じフランクフルト中央駅に停車中のコラーユ客車.画面左にチラリと見えるのが1等であることが,窓上の帯から判る.向こうは緑帯を巻いた2等車.この2年の間にフランス国鉄のロゴが“ヌードル”と呼ばれる新デザインになったことも判る.
それにしても,なぜ最初の写真のようなミスが起こったのか.チムニーの店長もただただ首をかしげるばかり.
ドイツなど現地の模型を語るインターネット掲示板などでも大いに話題になったようで,それを読むと,メーカーではこの製品を回収し,正しい製品を再出荷したようだが…….届いてみれば,それは合造車ではなく全室2等簡易寝台車であったという.客車のナンバーは回収前と同じで…….
この製品のメーカーはどこなのかって?……“HO SNCF 45307”というキーワードででも,インターネット検索してみてくださいませ.
秋の夜長のお退屈噺,失礼いたしました.