昨年9月3日の僕の担当ブログで“羅東森林鉄道の写真展”をご紹介した.会場は東京雑司が谷の“三愚舎ぎゃらりー”.台湾東部の山岳地帯に路線を持っていた森林鉄道の昔と今の情景を捉えた写真展だった.
 あれから1年.同じ会場で,今年は台湾鉄路局の蒸気機関車ばかりの写真展が開幕する.題して“蒸情台灣”.ちなみにナローの台東線は今回は対象外.日本の形式でいえば9600やD51,8620やC55,C57,そしてC12などが島内を駆けめぐっていた1960年代から1970年代末までの台湾情景である.
 この時代の台湾鉄路局の情景は,僕も1976,1978,1979年の3度にわたって訪問して幾許かの撮影を試みているから,いかにも思い出深い風景が目の前に展開して,しばし感慨に耽ってしまった.
 もっとも,機関車は同じでも,例えば杉 行夫さんが1966年に撮影された集集線の列車では,客車が17m級木造車だったりするが.

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集集線の情景を集めた一角.中央上部に見えるのが,水里(水裏)駅風景.CK12は前照燈がまだ白熱球タイプで,デフレクタとカウキャッチャーを見なければ,まったく南日本のどこかのローカル線風景といっても通じる.1輛目の客車は,なんだか優等車からの格下げに見える.

昨年は,まさに写真展が終了する寸前の紹介になったので,今年はもっと早くに,と思ったのだけれど,オープンは8月20日の金曜日.対して僕のブログの担当は毎週木曜日.となれば,昨年ほどではないにしても,会期半ばになってしまう.どうしよう,と,ちょっとだけ悩んだ末,特にお願いして,オープン前日の今日,会場設営にお忙しい中をお邪魔してしまった次第.

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メンバーは昨年と同じ.写真左から,蔵重信隆さん,野口信夫さん,金澤 忠さん,そして杉 行夫さん.設営に忙しい中,いろいろお話を聞かせてくださった.ありがとうございました.

広い会場での写真展もいいが,こじんまりしたこの三愚舎ぎゃらりーでは,本当の意味で写真と親しむことができる.そして主催者との距離も,ぐっと近い.9月5日までの会期中(木曜日は休廊),4人のメンバーは,だれかが常駐しているとのこと.訪問のおりには,気軽に声をかけて下さいとのことであった.

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こちらは古い機関車たち.画面右側のアルコ製コンソリ,通称“アルコ・キューロク”は,僕も廃車体を苗栗で見たが,画面左半分の8900類似のE200…CT240は影も形もなかった.画面左端上の写真は,この会場で初公開された,蔵重さんのご友人が所蔵の台湾総督府鉄道時代の機関車工場風景.

昨年の羅東森林鉄道写真展がきっかけとなって,今年の春,台北と羅東で,台湾の鉄道情景の写真展開催という快挙となった.その写真展に際しての訪台では,やっぱりあちこちの鉄道を訪問したメンバーだが,会場ではその成果が展示されている.例えば,羅東の“生きている”上部軌道や壮絶な廃線跡情景.そして元製糖会社の蒸気機関車など.
 今年夏,第一にお薦めする写真展である.

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今年の台湾ナローの情景を集めた一隅.手前は羅東森林鉄道の“生きている”上部軌道と,その奥の廃線跡風景.奥は保存されている製糖会社の機関車.