6月上旬の2週間ほど,PENTAXの画期的なデジタル一眼レフカメラ“645D”を試用する機会に恵まれた.各鉄道趣味月刊誌を丹念に読む習慣のある方なら,僕がこのカメラを試用したことを,すでにご存じかもしれない.なぜなら,ご同業のP誌スタッフカメラマンSさんの編集後記ですっぱ抜かれてしまったから.
 久し振りの,しかもデジタルとしては初の“中判カメラということでペンタックスとしては大いに力がこもっている様子が,ニュースリリースからも感じることができた.“とれいん”としても,フィルムの“ペンタックス645”について,開発者である庄野鉄司さんを招いて特集記事を組んだことがあるから,デジタル化されてどうなったか,ということを読者の皆さんにお伝えする義務もあるし……実は僕が使ってみたいというのが,一番の理由だったりするのかもしれないけれど……いや,私情は入っていない.つ,も,り.
 とにかくフィールドに持ち出すことを前提にして開発された“4000万画素”のデジタルカメラの実力と使い勝手に興味が湧かない写真ファンはいないだろう.

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“鉄道写真に最適の中判カメラ”として愛用者の多いペンタックス645.その後継機として登場したのが,この“645D”.

初仕事は京急の久里浜での新1000形とデト17+デト18の撮影.続いて山手線用E231系の全4扉編成の取材があって,主に編成写真における“中判”の功罪を確かめることができた.
 じっくりと構図を決めてピントを合わせて……という取材では,やっぱり“写したぞ!”という充実感が大きい.そして重宝したのがボディ背面の液晶画面異表示できる電子水準器.上下と左右の両方向の傾きを具合を同時に確認できるから,垂直線が気になる車輛写真の撮影では本当に便利.
 一方ではフィルムカメラに比べて最少絞りまで絞り込んでの撮影が難しいという,デジタルカメラ共通の弱点から,編成後方までピントを来させるようにするためには,ちょっと研究の余地がありそう.

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やや下から見上げの構図ながら,電子水準器のおかげで画面の上方を思い切ってカットし,できるだけ上すぼまりにならないよう調整.これまでは勘に頼るか,別付けの水準器と睨めっこしながらの調整だったので,とても手間がかかったものだが.

列車写真の撮影は,土地勘のある秩父鉄道沿線で行なった.梅雨入り直前の好天に恵まれたが,レンズの特性を掴み切れていなかったこともあり,やや不満足な結果に.けれども,“テスト”としてはそういうことも必要なのであって…….
 具体的には,列車が流れないようにとシャッタースピード速く設定したため絞りが開きすぎて,画面全体にフレヤーが出た写真を量産してしまったのだった.

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フレヤーが出てしまった写真のうちの1枚.機関車の車体の白線や機関士さんのシャツの白が飽和して滲んでいる.

もっとも,ここでご覧いただいているデータは,ウェブ用にサイズを小さくしているから,本当のことは判らないだろう.といって,実サイズでアップロードしようものなら,大顰蹙は必定.
 ということで,今月発売の8月号では,できるだけ実サイズに近い状態での作例をお目に掛けられるよう,知恵を絞っているところである.
 もちろん,どのように撮影すればこのカメラの特性を引き出すことができるか,取り敢えずのアドバイス的なことも記すことができるだろうか.ご期待いただければ幸い.

※2010.07.20:リンク編集

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最後に,このカメラの描写力の一端を示す情景を.4000万画素の撮像素子と,“タクマー”以来の伝統を受け継ぐ“smcペンタックス”レンズのキレのよさと美しい“ボケ味”は流石.ウェブ上ではどのぐらい看て取っていただけるか…….