4月下旬の出張で,ほんのちょっとだけ京福電鉄嵐山線……嵐電に乗る機会があった.まだポール集電だった頃には,撮影のために何度も通った路線だが,って,何年前の話だ.
 本当に何年ぶりかでの乗車だったけれど,元のモボ100グループは全部車体更新され,替わりに2輛の“レトロ調電車”が走っていることや,平成13/2001年にはインバータ制御車2000型も登場したことは,知識としては既に知っていた.

四条大宮の駅は,細部はともかく,改札口から覗いた駅構内にかつての面影を濃く残していてとても懐かしい思いがしたが,改札の左側にある切符の自動販売機を見てビックリ.なんと全線均一200円だというではないか.さらには1日乗車券が500円.一往復半すれば元が取れる勘定.これを使わない手はないと,さっそく有人窓口で購入,勇躍構内へ.ほどなくやってきたのは631と632のペア.631は“江ノ電カラー”に装われ,632は“化け電”と称して水木しげる描くところの妖怪たちで車体の外部が覆いつくされていた.まさに“異色”の組み合わせであった.
 そう,もうひとつビックリしたのは,100周年記念として期間限定ながらも,週末は子供運賃は無料という施策.なんという太っ腹な企画だろう.でも,家族連れを電車に向かわせるためには,けっこう効果的かもしれない.

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“江ノ電カラー”の631と“化け電”632のペア.それにしても化け電とは思い切ったネーミングだと感心しきり.

せっかくの1日乗車券だからと,いくつかの駅で途中下車を繰り返しながら嵐山へ.僕の記憶に残る,開業時の駅舎はとっくに姿を消し,新築された駅舎の階上で営業していた女性専用ホテルもすでに営業を終了.そればかりかホームの一角には最近流行の足湯まで営業しているなど,全く装いを新たにしていたが,ただひとつ,ホームのたたずまいと線路配置だけは昔のまま.愛宕山電鉄用ホームも,その名残りを留めていた.

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1番線に停車中のモボ105.この線路そのものが,元は愛宕山電鉄用であり,今はホームとして使われていない右側のホームと,その向こう側に敷かれていた線路も愛宕山電鉄の持ち分だったという

嵐山からは,鹿王院,車折神社,有栖川と,雅な名前の停留所を再び辿り,用事を済ませて(どんな用事だったかは,いずれのお楽しみに)帷子の辻へ.思えば,僕の記憶の中の嵐電と現実の嵐電の風景との間で,もっともギャップがあるのが,この駅かもしれない.線路配置こそ往時とほとんど変らないように見えるものの,駅構内のほとんどを覆いつくすビルによって,印象が一変していたのである.

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小倉山から愛宕山を背に,北野白梅町へと急ぐ最新鋭モボ2000型.停留所の雅な名前から,長閑な眺めを期待して訪問すると,ちょっと予想外の沿線風景にビックリするのは,40年前から変らない.

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敷地の上空に大きなビルが建てられて,昔の眺めを失ってしまった帷子の辻.線路配置などは変っていないように思えるのだが.

で,実は今回の嵐電訪問では楽しみにしていたことがひとつあった.それは,開業100周年を機に制定され,3月にデビューしたばかりの新塗装車である.“京紫”と呼ばれる装いが,実際にはどんな色合いなのか,である.しかし,なんというか,この日は車庫に入っていて,拝むことができなかったのである.これは“近いうちにまたいらっしゃい”という,嵐電からのメッセージなのであろうか.