このブログの読者ならすでにご存じ荒川好夫さんの写真展がはじまった.
 テーマは冬の北海道.とりわけ,函館本線で急行“ニセコ”を牽引していたC62ということで,実は僕は現役時代の北海道のC62,だけではなくて,冬の北海道の蒸機を知らないものだから,早く疑似体験したくて,初日に駆けつけてしまった次第.

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会場入り口.同じフロアに3つの写真展スペースがあるが,そのうちのスペース1が荒川さんの写真展会場.

順路に従って作品を見て廻りはじめてすぐ,40年の時間を越えた熱気に圧倒されてしまった.しばしのち,その衝撃から立ち直って1枚ずつの作品に近づいてみて,今度はモノクロネガから再現された豊かな階調にうならされた.引き伸ばしは専門のラボに託したそうだが,条件は,冬の北海道の寒さを再現すること,蒸気機関車の黒が潰れないこと,煙や蒸気の階調はすべて再現すること…….
 そんな難しい要求にもかかわらず,焼き直しはほんの数点だったそうだ.職人技は,まだ生きているのだった.

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新雪の日,スノウプロウがたくさんの雪を跳ね飛ばしているシーンを撮りたくて,探し求めたポイント.針葉樹の隙間に音もなく顔を出した瞬間!今みたいに1秒あたり何コマも撮れる時代ではない.しかもブローニー.“一発勝負”ということで思い入れがあるんですよ,と,荒川さん.

当時,鉄道ジャーナル社の“雪の行路”と題したムービーと連動した取材で,延べ3週間にわたって北海道に居続け,集中的に取材したというこれらの写真,ライフワーク的に集大成された写真群とは全く異なった“勢い”があって,時空を越えて見るものに迫ってくる.
 会場の57点,すべてからそのオーラが発せられている.結果,このスペース1は3月25日までの1週間,昭和46/1971年1月から2月の北海道にワープしているようである.その感覚を,ぜひとも多くの方に味わっていただきたく,特に登板日を変更してもらって記した次第.

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平日にもかかわらず多くの観覧者で賑わう会場.ちなみにスペース2ではサハラ砂漠の,スペース3では水をテーマとした写真展が開催されている.どちらも別の意味で魅せられる.併せてご覧になることをお薦めしたい.

会場は富士フイルムフォトサロン スペース1.元の防衛庁敷地が再開発された“ミッドタウン”の中である.

※ここに掲載した写真は事前に許可を頂いて撮影したものです.