ドイツ,ニュルンベルク・シュピールヴァーレンメッセ協会の会長であるエルンスト・キックさんが来日,10月15日に東京の赤坂でプレスコンファレンスが催された.昨年は本誌の12月号42頁の“Coffee Cup”でその模様をお伝えしたが,今年はこのブログで“速報”.
 このコンファレンス,昨年から独自の“シュピールヴァーレンメッセ・ダイアログ(Spielwarenmesse Dialog)という名称のもと,単なる記者会見ではなく,“対話”のできる場とされている.その会場には玩具業界報道関係から選ばれた約20人が集まったが,鉄道模型専門誌は本誌のみであった.
 さてそのダイアログ,まずは形通りの現状分析から始まった.60周年だった今年2月の見本市に出展したサプライヤーは2,689社.そのうちドイツ以外の会社が1,813社.日本からは30社となっているが,これは現地法人の出展を含まないので,実際には約100社ということになるという.一方来場者は約75,500人.2008年に比べると約5%減少している.日本からは701人で,こちらは約10%の減少.世界的な経済ショックの直後だったということを考えれば健闘したといえる数字だろうか.

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キックさんによる“ダイアログ”のスタート直後.

続いて新しい試みについて.まずは“Baby'sWorld”と称される,乳児向け玩具類の拡充.2009年には135社だった出展社数を増強して,ホール2全体を乳児のための玩具に特化するという.
 第2は“Way to School”.学童のための文具類や玩具類を充実させるという.
 3番目は“玩具会議”の開催.これは生産や営業,デザイン,そして流通の専門家などをパネラーとして招いて,玩具業界の将来,そして国際的展開についてディスカスするもの.
 4番目は,世界中の玩具業界のプロが参加可能なインターネット・ネットワークである“MyToyCom”の創設.ここでは約3,000社から約40,000人の参加によって,イベント開催予告や各種情報サービスを展開し,グループやフォーラムを設けてその中で業界人による情報交換などを可能になる.うまく活用すれば,本誌読者の皆さんにとって興味ぶかい,有益な情報をいちはやく提供できるようになるかもしれない.
 その他,“第1回国際玩具会議”や“トイ・ビジネス・フォーラム”の開催,ライセンス商品展示の充実などが企画されているという.
 僕が初めてメッセを訪問した1980年代には,“ただひたすら見本市”という感じであったのだが,今では,次々と新機軸を打ち出さなければならないご時勢のようである.いいことなのか悪いことなのか……多分いいことなのだろう.
 インターネットを代表とするバーチャルな世界から得られる情報と,実際に現地を訪問してこそ体感できる情報と.その融和がこれからの課題であり,そのための努力が精力的に行なわれている,というのが今回のコンファレンスに参加して感じられたことであった.

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参加者と会話中のキックさん.回を重ねるにつれ通訳さんとの呼吸もぴったり.

その一方では,かつて“我々が見本市を支えている”という言葉も聞こえた鉄道模型業界の地位が低下しているのではないかという感じも,残念ながら大いにある.
 具体的になにがどうということはないのだけれど,すでに何年か前から,鉄道模型業界の展示スペースが,やや小さなホールに移動していたりしていることからも感じられていることであるのだが.
 それでもなお,鉄道模型はドイツの玩具・モデル産業の一翼を担っていることは間違いないところ.もしも“欧州製品を勉強してみたい”と思われた,業界人がおられたなら,ぜひとも見本市の日本代表部にコンタクトしていただきたい.
 連絡先;
〒160-0022 東京都新宿区新宿 1-24-7-210 ABCエンタープライズ(株)
(今年はじめに移転しています)
シュピールヴァーレンメッセ日本代表部 電話03-5369-6787
E-mail;spielwarenmesse@abcenterprises.jp
(実際にメールを送られる場合は,“@”を半角に変えてください)

ちなみに2010年の会期は2月4日午前9時から9日午後5時まで.

残念ながら入場できるのは業界関係者のみ.欧州型愛好の皆さんは,新しい試みも考えている本誌からの情報発信をお待ち願いたい.

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会場の正面玄関ではためくメッセニュルンベルクのシンボルである“木馬”.来年はこの会場でどんな新製品を見ることができるだろうか.
FOTO: SPIELWARENMESSE eG /FRANK BOXLER